いちばん楽しかったとき

今回の日本滞在もあと1日となりました。結婚以来、何かに取りつかれているようだったチケット不運をぶっ飛ばすようなライブ通い/観劇ラッシュでわたしはもうオットの目が怖いです、って全額自分のオーエル時代の貯金から支払ってるから問題ないはずなんだけどね。ユーミンもあゆも3人そろったTMネットワークまで来る1ヶ月なんて奇跡よねホント。そんな中、ひさしぶりに魂を揺さぶられる舞台にもめぐり会うことができました。オットはその価値を認めないらしいけれど、その記憶をふと取り出して美しく思い出すことがどれほど精神的に豊饒な事か。実際、私は今でも20年近く前のユーミンのコンサートのワンシーンを思い出しては、ふとうっとりして、辛い事を忘れたりしている。今回はそれらの記憶の宝石箱にさらに素敵な仲間が加わったという、そんな感じだ。それが『今年100周年を迎えた宝塚歌劇団ベルサイユのばら』という超クドい物件だったっていうのは、まあアレなんですが。


グルメ的にも美味しい1ヶ月で、何とあの名古屋の予約困難店「サラマンジェ・ドゥ・カジノ」にも行くことができました。予約取ってくれた旧職場の妹分・Pよありがとう。そんなわけで今日は、Pの話です。
「バカにするかもしれないですけど、わたし、あの職場にいた時が一番楽しかったです」
Pは言いました。もちろんそれは、私もいたあの職場の事です。
確かに、Pはあの職場で、本当に買われていたし、すいすいと海を泳ぐイルカのように社内を闊歩していました。3歳年下(ずっとずっと若く見えたのだけれど、実際はその程度の年齢差だった)のPですが、私はそれをまぶしく眺めていたような気がします。


なんで、バカにするかもしれない、なんて言うんだろう。私がその前、社内では比較的派手だった海外部門にいたから?それとも、その後、うわべだけなら腐っても「銀座のIT関連企業」に転職したから? そんなことない。私もまた、異動したときには戸惑いを覚えたものの(だからPは「バカにする」なんて要ったのか)結構、それはそれで暑苦しく仕事していた記憶があるあたり、意外に好きだったのかもしれません、あの無茶な職場が。セクハラ・パワハラ寸前の言葉を平気で投げかけられた、あの野郎な感じの職場の記憶は、今となっては貴重な体験。それはそれで大切だった。楽しくはなかったけれど。…でも、楽しかった職場なんて、あったっけ?


私はPがちょっとだけ羨ましかった。一番楽しかった、と堂々と言える場所が彼女にあることが。