女王なき世界の女王〜「ベルサイユのばら・オスカル編」

やー、観てきました宝塚の『ベルばら』。濃すぎるGWバスツアーの中身やら何やらいろいろ言いたいことはあるのですが、とりあえず興奮の記憶だけ記録しておこう。


私はどうも、宝塚歌劇を(意図的に!)いっさい忌避して30過ぎていきなりその世界に飛び込んだ人間なので、「タカラヅカの文脈」「タカラヅカの美学」にはとんと疎い。だから、それが本当にいい事なのかどうかどうかわからないのだけれど、昨日観た『宙組ベルサイユのばら〜オスカル編』はすごかった。芝居は熱いし、いかにも姫系なハリボテセットも世界観的には問題なくて可愛かったし、1幕も2幕も終わった途端スタンディングオベーションしたくなる気持ちを必死でこらえた。っていうかそれでもどうにも抑えられずというかヅカ的な意味で育ちが悪いのがうっかり出てしまい、拍手の打点がヅカファンに比べて異常に高かったのは私です。後の席に座ってた人すみません。


「“オスカルとアンドレ編”“オスカル編”が謳われた場合の宝塚版ベルばらにはマリー・アントワネットとフェルゼンが出てこない」という衝撃の事実を知ってマリー・アントワネットがいないベルばらなんて、っていうか古いビデオ観ていて一番気に入ったあのバカみたいに大げさな「マリー・アントワネットはフランスの女王なのですから!」というセリフのない宝塚版ベルばらなんて成立するのかしら、つまらないわ、と思っていたけれど、“オスカル編”だけに別にアントワネット様などいなくても宙組トップスター凰稀かなめさん演じるオスカル様が代わりにキッチリ女王様なのだった。話も、「周囲の人が見たオスカルの一生」をなぞっていて、かつ実質的な本編はアントワネットの親衛隊を辞めて主に平民で構成される衛兵隊に転属する〜バスティーユ要塞前で戦死するという晩年だけにスポットを当てたものなので、それはそれでアリなんだと思う。2幕は私が予想していた通りの乙女ゲー展開だったのだけれどまあそれでもいいや、どうでもいいわ、何しろオスカル様が池田理代子先生の原作からそのまま抜け出てきたようだ!」と叫びたくなる程度に男前にぴりりと美しい大女だったし、天に召されるあたりからフィナーレともなると完全に女王様だった。1幕のラストでゴールドの鎧に身を包んだオスカル様の乗るペガサスがクレーンでフライングするとこ(若かりし日の肖像画、という設定のはず)なんかもすばらしすぎて笑っちゃった、かつてユーミンが1995年頃に、それに引き続いて浜崎あゆみが2001年にコンサートでやった「ミラーボールに乗って歌う」以来の異常な、バカバカしいまでの多幸感だった。そんなわけで、“タカラヅカ”の文脈からはいろいろ外れてる部分も多いらしいのですが(トイレで皆が言ってた。アンドレの出番が本当はもっと多いらしいとか、オスカルは本来もう少し小柄で可愛い感じだそうだけど…でも、アントワネットとフェルゼンが不在な時点で「本当」って何なんだろう?)女王様好きにはオススメ、バラとか姫系が好きなら尚更見るべき!なステージでございました。チケ難らしいけど、いわゆるアリーナクラスのアーティストのチケ難ライブに比べればチケットだって安い…はず。かくいう自分も、「はりきって抽選申し込みすぎたせいでチケット1日余分に取れてきちゃったよ、どうしよう?(←しかし他は全部ハズれた)」「ヤフオクに出して稼いだ分を5月末のあゆにぶっこむかー」なんて思っていたけど、やっぱりこれはこれで行っちゃおうかな、ダブルキャストでオスカル以外の主要キャストががらりと変わるみたいだし…(オットにはとても言えない)。


ちなみに体のラインもあらわな全身タイツ系の衣装に大輪のバラの花のコサージュを付けたブロンドの巻き毛をなびかせてドヤ顔で踊るオスカル様、というフィナーレを見ていて、なぜだか今度は西村しのぶ画伯のマンガからそのまま抜け出てきたようだ!」とか思っていた私である。別にオシャレな服着てるわけでもなく正統派の宝塚のショウでよく見るタイプのこっぱずかしい衣装だし、何で池田理代子西村しのぶになっちゃったのかよくわからないんだけど、西村しのぶがよく描いていた「長身で超細身、面長で派手な男顔の美貌、がっつりカラーリングかブリーチしたロングの巻き髪(執筆時期によってソバージュ〜関西巻き髪〜デジパーをラフに散らした感じまで変遷)、何となくセレブ感」な「おっとこまえ女子」をものすごく想起したんだよなあ…ってでもこのアウトラインだけ並べてみれば、別にそれって正しくオスカル様じゃないか。まんざら的外れでもないって事か。

RUSH 5 (Feelコミックス)

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