「駐在」と「帯同」

突然の停電、ガス漏れ、そしてつい最近で言えば断水なんかがあると、どうしても、駐在員妻さんのブログをネットサーフィンすることが増える。日本だったら、もしも停電や断水があるにしても事前に連絡があるか、もしくはNHKのニュースで大々的に被害が放送される地震や台風のときぐらいのもので、海外生活している人限定になるからなあ。


具体的には、南アを除くブラックアフリカに比べればここは全然マシ。南米ならブラジルでもサンパウロではなくてマナウスだと(こちらは南米スライド異動の奥様もちらちらいらっしゃるのでナマの話を伺う機会もあるけれど)物価の高さや虫の大きさ的に大変そうだ。大穴ではパリ以外のフランスも、お風呂に入る習慣がないだけに、給水タンクや給湯器のキャパが少なくて意外に住みづらそう。治安は、ここは大穴で悪そうだなあ。一見フツーに歩ける雰囲気があるだけに、少額被害の強盗にあってる人の割合が意外と高い気がする。


しかしそんな“駐在員妻ブログ”を見ていて気になる言葉の使い回しがある。
「今はシンガポールに駐在している●●ちゃん」みたいなネタ、もしくはプロフィール欄の「現在ベルギー駐在中!」なんて記載だ(国名は実際に私の友人が帯同した国を使ってみただけです)。中身を読んでみると、ほぼ例外なく、“駐在”ではなく“帯同”。つまり本人が辞令を受けて海外拠点で働いているわけではなくて、まあ十中八九は要するに駐在員妻だ。おいおい駐在してるのはアンタじゃなくてアンタの旦那だろう。あくまでも銃後の守り、という立場であって、自分自身が24時間闘うビジネスマンとして仕事=戦場に向かってるわけではないじゃん。


…と毒を吐いてみたけれど、そういうのが気になるのって、仮にも海外に拠点のある企業で、イチオー男性と同じ待遇で働いていた(実際、技術職と一般職を除くとたった20人強しかいなかった同期のうちのひとりが同じ街に家族帯同で住んでいる)、そして今になって突然自分自身の稼ぎがなくなったのが不安でたまらない自分だけなのかなあ。確かに、よくよく考えれば、“駐在”と自分自身の事も言い切れる駐在妻さんのほうが、「運命共同体」としての自覚が強い可能性もあると思う。実際、普通のカップルよりはずっとご主人の仕事事情やら会社の経営状況に詳しい奥様が多いように感じるしなあ。それに、停電や断水の報告はもちろん、強盗やデモやテロの情報に関する速報も、外務省でも駐在員でもなく、駐在員の妻という特派員たちのブログで知らされるケースも実際問題、ある。そりゃ、24時間闘うジャパニーズビジネスマンの皆様にはそんなものを書く時間もないはずで、外務省だって事実関係の確認に時間を割くから速報性には欠ける部分があるし、必然的にそうしたカルチャーショックな速報は“ヒマな奥様方のおぼえがき”になるよね。


そういう意味では、帯同家族でも“駐在”と言い切るのは、別に悪い事ではないのかもしれない。だって、自分も使っちゃおうかな?と思うと、今度は「いや自分はそこまでオットと運命共同体として完璧にサポートできているわけではない」という抵抗がある。しょせん、自分は中途半端、というだけなのかもしれない。