おとめ、開封 〜ザ・古典を初体験編 (Part2)〜

moeringal2013-12-24

わずか1年半の自分の宝塚暦、さらにほぼひとり観劇、かつ大した席で観ていない割にはインド人とうっかり出待ちをしたり、OG公演に行ったり、さらにそのOG公演では客席に降りてきた貴城けいさん(もと宙組トップスター、今は超美人)とハイタッチをしてしまったり、なかなかどうして濃い体験をしているのではないかと勝手に思っています。私にとって宝塚とは一言で言って「少女漫画が眼前で3次元化する舞台」なわけだけれど、「漫画『ZUCCA×ZUCA』の世界が眼前で3次元化する」場でもあります。異様に細身な8.5頭身に白いスーツ、女顔にヒゲを生やした男性もマンガの世界でびびるけれど(「りぼん」あたりに掲載されているマンガの絵柄の男性って今も昔も女顔だよね)、燃え上がるヅカヲタさん達の熱気に触れるのもまた、マンガの世界が現実に飛び出てきて衝撃を受ける瞬間です。


今回はそんなわけで、千秋楽当日、というやつを体験しました。千秋楽当日の午前公演、ということで、道理で某合法チケットサイトで強気の値付けをしていると思ったよ!でも友達とランチお茶もしたいし、早く名古屋にも帰りたいし、その日のその時間しか空いてなかったんだよ!

そしてこの日、私は新たにすごいものを見ることになりました。すなわち、「スターの退団当日のファン」というやつ。この日は宙組発足当時に宙組に配属されたというベテランスターさんの退団当日。朝、時間が余ったので立ち寄った劇場近くのセガフレードには、あのマンガで描かれた通り、「スター退団当日、全身真っ白な、あたかもパナウェーブ研究所のような出で立ちで集う宝塚ファン」の姿が…!

いやあ、「本当にこんな風なんだ…!」と感動した私です。だって真冬に白いお着物とか、信じられん。

公演の間中も奇跡は続きます。私の隣の席は、おひとりさま観劇、しかし明らかに中学生の女の子で、ショー仕立ての冒頭、今日で退団となるアシュリーがせり上がってきた瞬間泣いていました。そうか、君は悠未さん(スターさんの名前)が初恋の人か…大変背の高い人なので、どうか将来的に男役ラヴなうちの母の独身時代のように「身長175センチ以下の男は眼中に入らない」とか言って選択の幅を狭め狂わせるようなことがないといいのだけど、でも無理なんだろうなあ…。

ところで今回の『風と共に去りぬ』が4回目の宝塚観劇となった私、いわゆる“宝塚の定番”的作品は初めてだったので、劇中外の出来事なども本当に面白かったです。漫画『ZUCCA×ZUCA』で描かれる絶賛系熱狂的ファンとはちょっと異なる、ちょっと毒舌で上から目線なファンの皆様(しかしそういう人が実際には多い気がする、まあ絶賛系の人はきっと大人しく黙ってうっとりと観劇しているのだろうし)が、しきりにトイレで「足かけ4か月続く公演の最後まで、結局、麻実れいほどの重厚さも、天海祐希ほどの若々しい華も出すことができなかったレット・バトラー」を批判していたのには恐れ入りました。パンフで上演記録を確認する限り、それぞれ20年も30年も前の話だから、記憶が必要以上に美化されている気もするのだけれど…(それこそ、美しく上品で何の挫折もない南部の貴族だったアシュリーの面影に戦後も延々と恋をしていたスカーレットのように!)。いや私は好きだけどな、今回の、あのスカーレットに愛想を尽かす瞬間のレット・バトラー。惚れてくれてるはずの男がなぜ突然、なんでもないことをきっかけに離れていくのか…ああ、きっとバトラーの役者さん(もちろん素顔は美女)はきっとレンアイで痛い経験をしたことがあるに違いないよ。まあ宝塚歌劇としてのレット・バトラーとして正解なのかどうかはわかんないけど。
ただし、何だか、オペラもしくは日本の伝統芸能に近い重みを感じたひとときでもありました。出演者の皆さんは、新作とは異なり、「観客それぞれが心に抱き美化されつくしたまぼろし」とも戦わなければいけないのです。


トイレで忌憚なさすぎるおしゃべりを小耳にはさむ一方、気の早い事にすでに来年であるはずの“100周年記念”を言祝いでいるクリスマスツリー(来年のクリスマスはどうするのだろう)が飾られたロビーには、『ロミジュリ』では見かけることのなかった推定年齢80代半ば・60代半ば・40代前半・中学生と思われる女系家族の姿がありました。親子4代か…! 
私は、宝塚が好きになってよかったと思うことのひとつには、介護してきた祖母を亡くして気が抜けている母や伯母の話し相手になってあげられる事というのがあるので、そういうつながりを一つの劇団が作れるってってすごいと思うし、その母娘4代をうち揃って天皇誕生日に劇場まで足を運ばせる気になれるというあたりが『風と共に去りぬ』というクラシックな大作のすごさなのだと思います。ああ、観に行けてよかった。


…そんな感じで、今年のヅカ活は終了しました。何しろ距離があるのでなかなか思うようには観劇できず、東京で本公演を2回、大阪でOG公演を1回、宝塚・ほかミュージカル専門古本屋さん「宝塚アン」で買って観た古いVHSビデオはたくさん、という程度でしたが、どれもそれぞれ別の魅力があって本当に楽しかった。先生がOG公演のため日本に帰りっぱなしであるにもかかわらず、まったく冷めることなく続いた今年のヅカ熱でした。あああー、相変わらず楽しい。来年は記念すべき100周年となりますが、個人的な目標としては、「花組月組を観に行き5組制覇を果たす」「●キロ痩せて、宝塚大劇場内の変装写真館でマリー・アントワネットの衣装を着て写真を撮る(前にも書いたなこれ)」としたいと思います。