とにかく宝塚版『ロミオとジュリエット』が好きだ、という話

えー、宝塚の夏の公演は『エリザベート』なんですって! いや、私、『エリザベート』、昔のビデオを観てすっかり大好きなんですけど、すっごく観たいんですけど、でも、夏〜秋の公演は『ロミオとジュリエット』にもう固定したのだとこの2年くらいのスケジューリング見て勝手に思ってたのでちょっとショック。宝塚版『ロミジュリ』が観たい時に観られない一年もあるのね…いやまあ、宝塚って常に違う演目をやっててたまに名作を再演するというルーチンの劇団らしいので、4年連続で同じ演目を上演したことが逆に珍しいようなのですが。


でも、私は本当に、宝塚版ロミオとジュリエットは本当に素晴らしい作品だと思っているので(いろんな“甘さ”を含めて)もうこれは毎年持ち回りで上演してほしいと切に願います。
暑い夏、熱いステージ、女性が繊細に演じる少年少女のさわやかな悲恋。
毎年、クリスマスシーズンにリンカーン・センターでバレエ『くるみ割り人形』かオペラ『魔笛』を観るように毎年夏になると日比谷で『ロミオとジュリエット』を観られる文化、なんてのもいいんじゃない?とすら思うのです。それくらい好き。いやまあ、宝塚の大劇場はロケーション的にきびしいかもしれないけど、東京限定とか、もしくは関西は初演時の梅田芸術劇場にすれば箱代も安く済むんだろうし(阪急系の持ち物だから)。役が少ないのは、「すべての“生徒”に役割を」が基本コンセプトであるらしい宝塚らしくないのかもしれないけど、ダンスシーンが多くて舞台の隅々どころか客席通路でも踊ってくれるから、いい席で観るわけじゃない観客的には問題ないしなあ。だって、「あの子可愛い!」「あのカッコいい人だれ?」と目が奪われるシーンが、実は今まで観た宝塚4作品の中で一番多かったんだもん。結果的にメインキャスト以外の人にもオイシイ作品なんだと思う。


…というわけで、ここからはまだ観劇経験数回の超ビギナーが勝手にああだこうだと思う「宝塚版『ロミオとジュリエット』」の話です。しかも妄想、宝塚で初の妄想! ちなみに2013年の星組版以外は全部、映像(雪組版・月組版なんてさらに動画サイト)でしか観てません。


さて宝塚の特性として、組カラーがどうとか(観劇時にトイレに並ぶで長いファンの皆様がお喋りするのをダンボ耳する限り、「組のファン」というかたもいらっしゃるのです)、トップスター=主役というスターシステムを取る宝塚ではどうしても似合わない役者さんをロミオとかジュリエットにしなきゃいけないので毎年上演なんて厳しいんじゃないかとかいう考えもあるかとは思います。でも、個人的には宝塚歌劇団が“未婚女性ばかりの劇団”である限り、少年少女の悲恋はそれなりにハマってくる気がしているのです。
例えば、現時点でもっとも『ロミジュリ』から遠いと思われる(組としての上演経験がなく、さらに新人公演を含めたロミオorジュリエット経験者がひとりも在籍していない)のは宙組になると思うのですが、2013年の『ロミジュリ』『風と共に去りぬ』の両プログラムをつき合わせ、私が唯一持っている近作のDVD『うたかたの恋/amour de 99!』(ちょうど自分が名古屋にいる時期にお隣の日進市に来るというので行く気まんまんだったのに、知らぬ間に売り切れていて悔しい思いをした宙組の地方公演。ちょうどamazonを見ていたら、発売前キャンペーンで予約割引していたので買った)の記憶も呼び起こしながら、ムリヤリ2014年時点での宙組でキャスティングしてみるとします。

ロミオ=凰稀かなめ
ジュリエット=実咲凜音
ティボルト=朝夏まなと
ベンヴォ―リオ=七海ひろき
モンタギュー卿=寿つかさ
モンタギュー夫人=鈴奈沙也
キャピュレット卿=緒月遠麻
キャピュレット夫人=純矢ちとせ
ヴェローナ大公=蓮水ゆうや
乳母=美風舞良
愛=伶美うらら
ロレンス神父=英真なおき(専科)

え、別にいいじゃんいいじゃんこれで。
この宙組メンバーで年末に上演された『風と共に去りぬ』の休憩時間でのファンの皆様の会話を聞いて、すっかり「名作の再演の怖さ(とにかく皆、美化され過ぎているかもしれない過去の観劇の記憶を呼び起こしてああでもないこうでもないと言っている)」を知ったけれど、そしてきっとこのキャストは、いやどんなキャストでも非難ゴウゴウなのだろうけれど、別にわたし全然観たい、これ。そして何も知らない宝塚ビギナーはたぶんこれで納得すると思う。


凰稀さんは細長くて大人っぽすぎる? いえいえ、高めの甘い声は十分少年っぽいし、青春を謳歌しながらもふと死の影にふるえるナンバー「僕は怖い」とかそっち系の場面がバッチリハマるから問題ないでしょう。確かに2010年の星組初演時のティボルトは神がかった影のある美しさだけれど、そんな先入観なしに観れば「やっぱりかなめさんは陰のあるティボルトよね」ではなく「ロミオ、繊細できれいだったな」と大満足するに違いありません(何しろレット・バトラーすら「バトラー、実は繊細でかわいそうな人だったんだな」と思わせる人だ)。実咲さんは歌うまいからジュリエットの難曲もカンペキに聴かせてくださるでしょうし、ヴェローナ大公も上品な感じになりそうだし、逆に乳母はムリに今までみたいな肉布団系を踏襲しなくても、ピティパットおば様の見た目で新しいアプローチをかけたっていいと思うし。緒月さんはすでに2011年に雪組でティボルトを演じていらっしゃるようなので、敢えて違う役で。ベル・ワトリングの「夜のアトランタを掌握している」感が半端なかったので大公なんかも似合うと思うけれど、もうひと世代上の役で見てみたい。ああそうそう、わたし舞台で伶美さんを観て、あの盲目の南部男子の夫人役はなんて美しい人なんだ!と思ったので、ダンススキルはわからないけれどとりあえず「愛」にしちゃいました。だって、あの人が舞台のそこかしこで微笑んでフワフワしてるだけでわたし幸せになれる気がする…。


ちなみにダンス巧者によさげな「死」と芝居巧者かつ少年のヒリヒリ感を上手く出せると美味しい「マキューシオ」をどうしたものか迷ったのですが、それぞれダンスの上手な若手男役さんと可愛くて演技のできる若手男役さんをそれぞれ抜擢すればいいんじゃないかということで私ごときが無理にひねり出すのはやめました。『風去り』のダンスシーンが少なくて、あっても古色蒼然としたゆったりしたものばかりだったので誰がダンスがうまいとかわからなかったし、役も少なくて誰もかれもが南部の青年や令嬢ばっかりだったし、『amour de 99!』は地方公演で組の半分くらいのメンバーしか出てないっぽいしでやっぱりよくわからないので(ちなみに2013年末時点での面子なら、大公=お辞めになった悠未さん、以下年功序列でベンヴォ―リオ=蓮水さん、マキューシオ=七海さんとしたい)。


…ああ、書いていたら架空の『2013年初夏の宙組ロミオとジュリエット』がとっても観たくなってしまいました。別に全然他の組でもいいので(今まさに『Shall we ダンス?』で中年サラリーマン夫婦になっているらしい雪組トップコンビのロミオとジュリエットだって個人的には全然アリだと思っています)、どこかでやればいいのになあ、今年も宝塚のロミジュリ。あのシックで立派なセットや衣装を倉庫に眠らせておくのはもったいないよー。それともセットとかは毎年作っては解体しているのかしら。

(でも、実際に宙組がやる『ベルばら』も、今年の夏の公演を担当する花組の『エリザベート』も観たいけどね!)