サッカーと自動車メーカー

相変わらずちっとも横浜に詳しくならない私も怒りのあまりかけつけた横浜F・マリノスの最終戦のあと、サポーターとフロントの間で「サポーターカンファレンス」なんてものが開かれたらしい。でもって、その議事録というかテープ起こしが今日、マリノスの公式HPで公開された。その分量、PDFファイルで51ページ。多いよ! しかし読んでしまった。

なんだかなー。やり取りを見て気になったのは、社長の自動車メーカー組織人事臭がプンプンするばかりか、質問者側も自動車メーカー労使交渉臭がプンプンしたこと(笑)。自動車工場で労組の委員をやらされていた時を、ちょっと思い出してしまった。そもそも、サポーターの発言にしても、サポ側が要求する“ベンチマーク”とか“PDCAサイクル”って、そんなにメジャーな言葉なんでしょうか。少なくとも、今自分がいる業界では全然聞かないんですが(笑)しかもそのベンチマークも、読んでいくとフロント・サポともに名古屋と浦和を意識してるらしいし。単に優勝チームとサポーターの強いビッククラブを指したのかもしれないけど、奇しくもどっちも自動車メーカーかよ!!!

そして思った、この社長は手強い。っていうか人事畑を上り詰めた役員そのものだよ、この言葉遣い。一見優しそうなのに、狡猾でひそかにドライで高圧的。そりゃ、日産が村山とか京都の工場をザクザク閉めて正社員のクビキリを万単位でしてた時に人事サイドにいた人なんだから、当たり前か…。おそらく、勤続16年の選手やら背番号10番の選手やらユース上がりの生え抜きやらをたかが数人クビにするくらい、腹の中じゃ良心の呵責も何もないに違いない。デジタルに年齢×年俸係数が高い順だもんね、そうだよね。上っ面でどう装ってたか知らないけど。
それに、今回のサポーターズカンファレンスでの団体交渉的なやり取りだって、不当解雇に関して騒ぐサポーターごときを集会でガス抜きして懐柔する簡単な手段でしょう。サポをバカにするつもりじゃなくて、だって所詮サポもサポ業で食ってるわけじゃないからね、たぶん当時、突然失業がかかった社員の熱気にはかなわない。

とは言えとりあえず、今のところ理性的で身の丈にあった補強が進んでいそうだし、「契約非更新選手(特に長年の功労者)への通達のプロセス、配慮等、過去に遡っても必ずしもうまく行っていなかった点の反省・改善とともに、クラブの情報管理、内外とのコミュニケーションの適正化を図る」なんてこれまたいかにも自動車メーカーの申し開きっぽい言い回しの宣言もいちおう出たし、「来年ACLに入れなきゃ辞めます」なんてダサい事言わずに、もっと中長期的なもの、いっそのことマリノスリバイバルプラン」とか示してほしいなあ。

「もしくは、マリノスタウン(みなとみらいのど真ん中に新しくできたマリノスの練習場)を売っぱらってテベス(アルゼンチン代表、FW。イングランド・プレミアリーグの現所属チームを辞めたいと言って揉めてるらしい)を取るとか。だったら年間チケット買っちゃうよ!」とはアルゼンチン代表好きなオットの弁。確かにあの、高級・高層タワーマンションの聖地において広大な場所を取るアレをマンションディベロッパーに売り飛ばさない限り、何十億なんて資金つくれないよね(笑)っていうか昔はマリノスってアルゼンチン代表経験者が実際ぞくぞくと入っていたから、何年後かにテベスが来るのも歴史的にはアリなんだな…。

しかしマリノスタウンで思い出したんですけど、自動車メーカーっていうのはどうしてこう、人件費よりハコモノ先行でお金使っちゃうのでしょうか。空前の収益とかいわれていた会社に勤務していた頃、東京出張ついでに大学の同級生と飲んだとき、それぞれフジテレビとゴールドマンサックスに勤めていた子から「景気いいよねー。最高益だもんねー」とか言われて、「そんなの全部海外の工場の建設費に設備投資されちゃって、給料なんてあんたたちの半分もないやい」と心で泣いていた事なんかも、ちょっと思い出した。