騙し、騙されああ何年

この日記を長らく読んでいる皆さんは私と親知らずとのだましだましな関係について何らかの記憶がある方もいらっしゃるかとは思いますが、ついにその関係に終止符を打つ時が来ました。しかも突然に。


きっかけは日本×パラグアイ戦翌日。朝起きたら突然、パン、しかもバゲットとかじゃなくて恐らくパンの中でも最強に柔らかそうなバターロールパンが痛くて噛めなくなっていた。そう言えば昨日、デパ地下で買った見切り品のカツ丼(…)を食べていたときも妙に痛かった記憶はあったけど、これ、激痛。しかも、普通の歯の痛さじゃなくて、もっと外科的な感じ。でも仕事もあるしなあ…ということで、とりあえず出社し、駅から会社に向かう途中で、kikiちゃんオススメの新橋/内幸町の歯医者に電話してみました。

「今日でしたら、11時半からではいかがでしょうか? もしくは16時」

早い! 歯医者さんは、今の会社からはぎりぎり徒歩圏。それにどうせ痛くて仕方ないんだから、ちょっとでも早い方がいいに違いない。というわけで慌てて出社早々上司に確認を取り、私用外出扱いで行くことに。

初診だったのでレントゲンなどをあれこれ撮り、カウンセリングと称しつつkikiちゃんの人となりについて熱く語った(「kikiさんはホント、こっちが元気になっちゃうよね!」「いやあ、彼女もああ見えても結構繊細なんですよ」など)後、出た診断はまあ、1年前に「今度は唯一残した右上親知らず(まっすぐ生えていない)が頬に干渉して口内炎ができまくってるじゃないかー!!!」と叫んでいた事が、一時小康状態になったものの、ますます成長することによってついに口内炎どころか歯茎を突き破って傷にしてしまっているとの事でした。道理で普通の歯の痛みじゃないと思ったよ。もともと、親知らずを上手に抜いてくれる歯医者さん、ということで紹介してもらっていたので、ここはひとつ先生というよりkikiちゃんを信頼して、「今後は抜く方向で」ということで一致。茶渋でスモーカーばりに黄色くなっている簡単な前歯のクリーニングまでしてもらって、最後、次の予約を取ろうとしたら、

「一番早く抜歯できるお日にちは明後日ですが…」

早いよ! もう抜歯かよ! っていうか、よく考えたら普段とは違って、親知らず付近が腫れてるわけではないから、炎症が収まるのを待つ必要もないわけよね。固形物がろくに食べられなくて、銀座ランチどころか夜まで全国チェーンのファーストフード「Soup Stock Tokyo」な状況にはうんざりしてるし…。

…ということで、抜いてきました。痛くなってから抜歯まで、わずか2日強。前回の大病院でも、自分が「生産ラインを流れる工業製品」化してテキパキ流されているうちにあれよあれよと2本抜かれていたけど、個人のクリニックは個人のクリニックで日程調整が楽勝もいいところな模様。そして抜く時間は、やはり椅子に座ってから(話好きの先生なので、インフォームドコンセントを兼ねた患者さんとのおしゃべり次第で予約どおりの時間にはいかず、結局押すこともある模様)「うーん、アゴが小さいからこんな変な方向に生えてきちゃったんだねえ…でも大丈夫だからね! ちょっと横向いてね〜」とテンション高く言われながら抜歯され、「でもねキミ、3年後にはその隣の歯も、なくなってると思うけどね、その歯茎だと」という不気味な宣託をいただき、しかも痛み止めをもらってお金を支払うまでで15分。今のところはそんなに腫れてもいないし、いやあ先生、やっぱ何気に名医? っていうかこの何年も、騙し騙されしつつ共存してきた3本の変な親知らず達とも、これで永遠にさようなら? 


思い切ってしまえば後はいとも簡単、って、こういうことなのかもしれないなあとしみじみ思います。しみじみし過ぎて自ら「親知らず」でこのサイトの日記内検索をかけてしまって浸ってしまったよ。
オーエルらしい華やかさに満ちたイベント「歯医者との合コン」を「親知らず相談会」にしてしまったり1本目を抜いてくれた歯医者さんと裁判沙汰になりかけたり、本当にこいつらには手を焼いた。でも、長年つきあってきたダメ男とついに縁を切ってしまったような、そんなちょっとだけ淋しい気分も。うん、ちょっとだけね…。