細胞レベルで“モテる”女

STAP細胞のオボカタさんって、表情がいちいち絶対「アタシって可愛い」って思っていそうだな、と思う。そしてそれに気づかない男達が群がりそうな、ものすごく完璧な「隙」のある容姿だとも思う。割烹着なのにカラーリングしてキッチリ髪の毛をまとめもしない(いちおうハーフアップだけど)研究スタイルって、いくら撮影用でもありえないだろーとひねくれた私は思ってしまうんだけど、ある種の「萌え」は確実に呼び起こしそうな組み合わせではある。どちらかというとギャルゲー的な。


釈明会見も「コツ」って、それ、理系の業界で許される話なんでしょうか。同期の事務系・技術系比率が3:7だった理系企業でオボカタさんの年齢を越すまで働いていた自分からしたら、「カン」とか「コツ」が必要な研究論文の前提なんて、あり得ない話だと思うんだけど。でも、研究ノートを「レシピ」とか言っちゃうそこら辺も、男たちはそそっちゃうんだろうなあ。こんな事にならなければ、すっごいステータスの高い、ルックスもいい男の人をサッサと捕まえて、しかも仕事も充実…みたいな、何の挫折もなくすべてに恵まれていたであろうタイプ。しかし、言う事を鵜呑みにしたら、おカネがかかるはずの基礎研究を200回以上も成功させたって話だよなあ。予算持ってるなあ、理化学研究所…。


そして涙。男ならずとも、素直な女でも、若いお嬢さんの涙についほだされる人は多い。涙を浮かべている時点でこの勝負、オボカタさんの勝ちなのだろう。私はひねくれ者だからそんな事は思わないけど。「オボカタさんかわいそう。理研は実験させてあげるべき」「許してあげて」っていう世論が、男性のみならず主婦層とかの間でも結構デカいのはどういうことなんだ? 芸能人の不倫じゃあるまいし、涙で済むことじゃないだろう、と思うのだけど、そうでもないんだろうか。それとも主婦たちは、彼女の中にかつて涙で彼氏をだましてケッコンに持ち込んだ自分自身を見ているのだろうか。


ものすごく前時代(ここは単純に一昔前、90年代〜2000年代前半をイメージしてください)な見方になってしまってイヤなのだけれど、おそらくオボカタさんは『理系企業で輝く女性研究職』の広告塔として祭り上げられただけなんじゃないかなと思う。そうじゃなきゃあの会見で言っていることなんて、プロジェクトリーダークラスの管理職だとは到底思えない支離滅裂ぶりだ。何だかすごくオーセンティックな、「女性がのし上がるには、ああいう風にやらないといけない」像にも見えて本当に気持ち悪い。そんなの、課長時代の島耕作くらいにしか通用しなさそうな話だと思うのに。



彼女が、すべて計算ずくで、自己プロデュースの果ての茶髪ハーフアップ・割烹着・涙だとしたらそれで納得がいく。優秀な人だ。芸能系のコンサルティングでも受けたというならその自己啓発への姿勢もアッパレというもの。でも、天然で全部やってるとしたらこれはすごい事だ、と思う。再生医療に使える細胞なんかよりも、むしろそっちを研究した方がいいんじゃないか。だって、細胞レベルで彼女は「モテ」を体現しているもの。モテ細胞。


それにしても、そもそも「おばあちゃんの割烹着で研究」を許してる理化学研究所、どんなところなんだ! うちのオットなど、理化学研究所理研)のことを「わかめスープの会社が持っている基礎研究所」だと、どれだけ私が説明しても思いこんでいるんだぞ…と思ったら、あながちハズレでもなくて、「戦前の理化学研究所を母体として、研究成果を工業化するために作られた理研栄養薬品株式会社」が、現在の理研ビタミン社のルーツなんだそうだ。うーん、わかめスープとかノンオイル青じそドレッシングの会社の実験部がユニフォームとして割烹着を採用しているという話なら、一応納得するんだけどな…。