労働の需要と供給

うーーーーーーーーーーーん、世の中は私をまだ働かせようとするのか。


結婚しても何ひとつ家事をすることができずにひたすら外食代とタクシー代が家計を逼迫していたとき、私は試算の結果「何もこんなにカネの出入りが激しい暮らしをしなくても、月に8万円稼げば、身の丈に合う好きなことをしながら健康に静かに暮らしていける」と結論付けたものだった。8万円の内訳は、月に数回の友人との気軽なランチ(〜1,500円、往復1,200円以内)と2〜3回の夜の外食(総予算は6,500円程度)、月に1回の信頼できる(ジェルネイルにカビを生やしたりすることのないような)ネイルサロン、2ヶ月に1回の学生時代から行きつけている代官山の美容院、スポーツジムの平日昼間プラン、そして2ヶ月に1回のライブ(観劇を含む)、そしてワンシーズン数着程度の、一介のメーカーサラリーマンを夫に持つ専業主婦にしては少しだけマシな洋服や靴の購入。


今でもその試算にブレはない。まあ自分なんてそこそこに安いオンナなのだ、本来は。働き過ぎたからこそ反動でパリで大散財したり、いきなり香港へ逃亡したり、かと思えば日本のデパートで普通にフランク・ミュラー買ったり(まあいちばん安いラインだけど)ゴールデンウィークにペルーへ行ったり、外車(まあちょっとマシな国産車と変わらない値段だけど)買っちゃったりしていただけなのだ。だから、これからの余生はせいぜい気楽にフリーターでもしようと思っていたのに…!!!

<安倍首相>配偶者控除の縮小検討指示 女性の就労促進狙い
毎日新聞 3月19日(水)21時27分配信
安倍晋三首相は19日、政府の経済財政諮問会議産業競争力会議の合同会議で、専業主婦がいる世帯の所得税を軽減する配偶者控除の縮小・廃止を検討するよう指示した。
安倍政権の成長戦略に関連し、女性の活用を促す狙いがある。
合同会議は首相官邸で開かれ、女性が働きやすい環境の整備や少子化対策などを議論。首相は「女性の就労拡大を抑制する効果をもたらす税・社会保障制度の見直しや働き方に中立的な制度について検討を行ってもらいたい」と述べた。働く世代の人口減少が見込まれる中、能力を十分に発揮できていない女性らの登用が経済成長を左右する。伊藤元重東大教授ら有識者メンバー4人は「50年後も1億人程度の人口規模を維持する」との目標を掲げ、対策を提示。
当面の重要課題として、正規・非正規労働者格差是正▽待機児童解消▽労働時間の短縮▽配偶者控除の是正▽子育て支援のための第3子以降への公的給付の増額−−などをあげた。

【後略】

しかしこれ、「女性が働かざるを得ない状況に追い込めば働くだろう」という逆張りな考え方だよなあ。確かに働かざるを得ない状況に追い込まれたとして、はたしてそんな、今まで働いてこなかった女たちを受け入れる側はキチンとそういう雇用を創出できるのか。そのあたり、労働力の需要と供給のバランスはキチンと取れるのか。
いったん専業主婦になって数年経っちゃった、私や私の周囲に大勢いる無資格の元オーエルたち(とは言え外資系秘書に営業職、大手メーカー総合職などそれなりの仕事をしてきた人々)ににもちゃんと「能力を十分に発揮できる」なんて大仰な雇用の機会って与えられるものなんでしょうか。そうは思えないんだよなあ。少なくとも、私が雇用する側だったら、そんな甘ったるい連中なんて雇いたくないもん。あるとすれば、今でも大企業を中心としてCSRの一環に近い形で実施している障がい者雇用と同じような感じだろうなあ。


…ちなみに私が知る限り、今現在でもヒトが足りなくて足りなくて仕方ない業界というのは確かに存在している。確かにその市場はこれからも拡大することが見込まれるし、その業界に女性が適しているかどうかといわれるときっとステレオタイプ的にはそこそこ適している、むしろ中年女性の仕事と見なされているし、恐らくそのあたりを見込んでの今回の発言なのではないかなあと思っている。でも、そうじゃないんだよなあ。実際にその業界を垣間見る機会はあったけれど、明らかに足りていないのは中年女性ではなく、じゅうぶんな腕力を持つ若い男手だった。アベさん、それ、わかってる?


まあ、引き下げる範囲を103万円から97万円にしてくれればいいんだけどね、私的には。「廃止」っていうからには、そんな甘っちょろい引き下げじゃないんだろうけれど…。