私が死ぬかスタアが死ぬか

オットの会社の海外駐在員向け福利厚生制度には、特定のサイトから注文すれば本などの送料を負担してくれるという我々のようにジャパニーズカルチャーをこよなく愛する人間にはとてもありがたい制度があって、私は10数年来愛読している『フィガロジャポン』を定期購読しているのですが、その送料の限度額が年度末に向けてかなり余っているというので、では気になる本を買おうという話になりました。そして「あゆねぇ…太っちゃったからなぁ…」と言いつつ、先日上梓されたという“浜崎あゆみのライフスタイルブック”を発注しようとしたら、売り切れてやんの。くぅ。しかし調べたけどせいぜい2万部しか刷ってないのね、そりゃちょっと甘く見過ぎじゃないだろうか。今、新譜がどれだけ売れてるか知らないけど、私みたいに新譜は気に入った時しか買わないけどこういうのは欲しいっていう歪んだファンもいるかもしれないしさー。ちなみに私は、プラベを切り売りし始めたあゆの窮状をさげすむどころかむしろ喜んでいるし、以前から「あゆが落ちぶれて地方のホテルでディナーショーなんかやってくれるなら這ってでも飛行機に乗ってでも行く」と公言してはばからない。なんだかもう、自分でもどうしようもないのだ。好きだとか嫌いだとかそういう領域を超えている。毎日CDを聞いたりするわけでもなんでもないのだけれど、生活の一部だ。


そこで思い出したのは、元ヅカファンの伯母の言葉である。「そりゃあね、宝塚のファンは皆、一生好きな人を応援するのよ。私が死ぬかスターが死ぬかだわ」…ちなみに伯母は少女時代かなり熱心にファン活動を展開した若手男役がいたそうだけれど、彼女がブレイクして急速にファンを増やした頃にちょうど自分の結婚・出産があったためうまい具合に足を洗う事ができた模様。
そうか一生か、そう言えばダンスの先生も日本に帰れば先生と恐らくは同世代で、結婚することなく(先生は結婚も出産もしたというのに!)ひたすら先生の帰国を待ちわびているファン代表のかたがいらっしゃると聞いたし、日本でテレビ見てたら紫吹淳という元トップスターさんのマネージャーさんももちろん宝塚時代からのファンのようで、自分の親に紫吹さんの部屋を掃除させていると言っていたし、まあそんなものか。


宝塚が好きだ、ハマった!という私であるけれど、でも、恐らくは今後も「私が死ぬかスターが死ぬか」というような“ご贔屓”ができることはないと思う。だって、それならあゆがいるんだもの。まさに同世代というか同じ年齢の、もうこの時点で若くて人気絶頂の時代は過ぎ去っている、それでも足を洗うことなく淡々と出てくるものを追いかけずにはいられないスターが。私にとって宝塚とは「劇場に行けば、いつだって毒々しいまでに鮮やかな華を惜しげもなく振りまいてくれるステージを、若く完璧なスタイルを持った女の子が見せてくれる」クオリティコントロールされた場所であって、それは、今でもものすごく好きなのだけれど否応なしに老いていく、そしてそれによって見せてくれるステージの内容も少しずつ変容していく浜崎あゆみ松任谷由実とは全く違うものなのだ。“ご贔屓”ができてしまったら、それって、ユーミンやあゆと何ら変わらないじゃないか。むしろ、特にタカラジェンヌの場合は多くの場合「卒業」という名で現役を退いていくわけだし(まあ、OG公演というものもあるにはあるのだけれど)。


さて、私が死ぬかスタアが死ぬか。私のほうがほんの数か月でも長生きしたとして、例えば40年か50年あと、浜崎あゆみの訃報を自分はどう受け止めるのか。今からすでにちょっと興味深くはある。ああ、一気に生きる気力を喪って自分も死んでしまったりして。ほんの数年前は「あゆ連動型恋愛症候群」なんてつぶやいていたけれど、まあせいぜい健康に長生きしたいものです、あゆも私も。

ayu LIFE STYLE BOOK

ayu LIFE STYLE BOOK