機内映画鑑賞、過去と現在

夜着の飛行機なのであんまり寝たくない、ということで、あれこれ映画ばかり観ていました。なぜか新作→旧作を交互に観た。旧作は、立場が変わると見方が変わるという意味でもどちらも本当に面白かったし、新作もハズレはなかったかな。


『ブルー・ジャスミン 日本未公開作。ウディ・アレンアメリカに戻ってきたよ!ということで、NYでの少し前の話とサンフランシスコの現在の話が交錯する、西海岸・東海岸ダブルで楽しめる内容。凝ってるし伏線は回収されているし笑えるところも多いし、軽く観れるんだけど救いはない感じ、ほら巨匠だから無理してまでハリウッド式ハッピーエンドに持っていく必要はないんだよ。個人的には、転落したNYソーシャライツの主婦(ケイト・ブランシェット)が、いかにも高い服を何度でも着ているのが、いかにも「転落したNYセレブ」で印象的だった。いかにも高そうで高い服やバッグこそあんまり着回しちゃいけない、というヘンな教訓を得た一作。


大停電の夜に』 2005年日本。菊池成孔が音楽担当という事で、クリスマスシーズンになぜか1人で映画館で観たなあ昔…。都内で大停電、というモチーフはなんだかものすごーく東日本大震災を思い出すのだけど、飛行機なんて無差別な公共の場で取り扱うなんて、『崖の上のポニョ』と並ぶ“震災NG映画”じゃなかったんだ!…と驚いて観てしまったんだけど、なるほど、途中で出てくる航空券はANAのホンモノ使ってるから、きっとスポンサー権みたいなのがあるのね。Eチケット化前夜のANAの航空券、懐かしいなあ。懐かしいと言えばこの頃の井川遥、何を隠そう、もう時効だから言うけどこの頃の自分はよく「井川遥に似ている」と言われていたものだった。その後彼女は結婚してスッキリ痩せて垢抜けて大変美しくなり、自分はぶくぶくに太ってしまって産んでもいないのにいつでも「妊娠6か月疑惑」が晴れない今では見る影もないけど。 閑話休題、“震災NG映画”と書いたけれど、「都内を歩いて帰るサラリーマンたちの列」は今見るとなかなかの生々しさでいい。何となく、いかにも「映画監督になりたい人」が作った映像と展開なので、そういうのが好きな人は今観ても気に入るはず。個人的には、独身だった当時は“上司と不倫しているOL”の井川遥が私にとってリアルな存在だった記憶なのに、今観るとその上司の奥さんである原田知世のほうに肩入れしたくなったあたりに、なんか、時間の流れを感じた。ニアミスしまくる群像劇、という意味で、当時も今回もなぜか『プレタポルテ』でも『ラブ・アクチュアリー』ではなく(いやヒュー様は大好きなんだが)『マグノリア』を思い出したのだけど、こちらは都内大停電という大災害が最初に起こるので、最後にカエルが空から降ったりはしません。


(ここで一旦仮眠を取ったのですが、『マグノリア』を思い出しすぎたせいか、なんだかひどい悪夢を見てしまって思わず叫んだ…ような気がする。周り皆寝てたけどさあ。「何か飲まれますか?」とわざわざ聞いてきたCAさんは絶対聞いてるよねえ。ああ、恥ずかしい。『大停電の夜に』はむしろ救いあるエピソードばかりのクリスマスストーリーです)


『WE'RE THE MILLERS』 日本未公開作。ケチな売人の男がメキシコの麻薬を密輸すべく、ニセ家族チームを作って家族旅行に見せ掛けて怪しまれずに麻薬を運ぼうとする…というくだらないロードムービー。くだらない、ほんとにくだらない、下ネタも多いし、しかし軽く観て楽しめて意外にしんみりする場面もあるし観た後の気分もハッピー。くだらないけど悪くないな…と思ったら、来春早々に『なんちゃって家族』というタイトルで日本公開するらしい。家族で観ちゃいけないし、初デートで観てもいけないけど、マンネリ気味のカップルでハハハと笑ってみるなら楽しいと思う。そんなわけでマンネリ気味のカップル(下ネタOKなふたり)にレートショーで軽く観てほしい。


『ベイブ』 オットがブタモチーフ好きで、今回もヘンリ・ベンデルで豚型のオーナメントを20ドルも出してお土産に買ってしまったので、つい観てしまった…。いやあ泣ける。日頃寡黙な飼い主の爺さんが歌って踊る場面あたりからは正直泣きっぱなしだ。というわけで、大人にオススメ。当時話題だった動物CGも、飛行機のディスプレイ程度ならこの当時の技術で十分。初めて観た高校生の頃はここまで泣かなかったと思うから、きっと年を重ねることによって別の感覚ができつつあるんだろうなあということがわかって、ちょっとだけ嬉しい。感受性がすり減るだけではないんだなあと。自分がペットを飼い始めたからかもしれないけどね。ちなみにこの話には性格の悪い猫が出てきますが、私はこの猫も意外と好きです(笑)



結局30分遅れで日本に無事到着できました。疲れた。ホテルへのシャトルバスがちょうどいい時間でラッキー。しかし成田の屋外のデジタル温度計が「3.8度」でびびる。ああ、冬なんだねえ、ここも。
成田JALホテルはすごく古いし、コンクリートがイガイガした天井とかは古さを隠し切れていないのだけど、改装して16平方メートルながらそこそこの快適空間を生み出していた。スリッパだけは使い捨てなのもいい。何というか、日本人の、少なくとも日本人が満足できる「お・も・て・な・し」能力ってやっぱりすごいと思う。
結局睡眠時間が調整できなくて、フィギュアスケートの男子フリー〜各局スポーツニュースをザッピングした。3年も協議の一線から退いていて、もしかしたら望まれなかったかもしれない出産まで今年したばかりで、それでもこのレベル(=「オリンピックを狙う」と言ってもフェイクじゃないレベル)までは持ってきた安藤美姫って、やっぱりすごいスケーターだなあ…。