おとめ、開封 〜ミーハーニューウェーブ編〜

何とかチケットを手に入れて観てきました、ヅカ版『ロミオとジュリエット星組)』を!!!


いやー、良かった。何だかステージ見てこれだけ震えるくらい興奮したのって久しぶりだと思う。タカラヅカ初心者の私ですが、それでもって入門する経緯が経緯だったので昔のビデオとか(20年くらい前、それこそ天海祐希真矢みきが現役だった時代)観るのも好きで、しかもその横で騒いでいる母(そこからさらに20〜30年前のファン)の影響まで受けているので“タキシード着た男役(なぜかオールバックに赤い口紅)が一斉に階段を降りてくる”なんていうクラシックな部分に恐ろしい中毒性を感じているのですが、これはさらに、というかむしろ「宝塚なんて興味ないね」という、しかしJ-POPの人気アーティストがやる大箱の派手にショーアップされたライブとかが好きな人のほうがハマる演目だと思う。つまりまあ、本来の自分的にものすごく好みだったのですが。思わずブロードウェイの勢いでスタンディングオベーションしたかった!…っていうかヅカファンはスタオベしないんだねえ…。


メイクはいわゆる昔ながらのヅカメイクに比べれば単なる盛ってるメイク風でモダン(アイシャドウもベージュ/ゴールド系だし)、衣装も豪華なんだけど色調抑えめで過剰すぎない(シビラ・ナネットレポー・シンシアローリーのどれかが好きなら、悪くないなと思うはず)、フランスのモダンミュージカルを輸入してるから曲もポップ(歌うと難しそうだけど、そこまで音程が安定しないアーティストも多いからポップス畑の耳なら逆に問題なし)…というのがその概要。主演のふたりも、特に昔の宝塚のビデオを観た後だとどちらかと言えばファニーな顔立ちなんだけど、そこが逆に普通っぽくて可愛い。そもそもロミオ役は、主役=男役トップスター=年功序列もあり大抵アラサー(むしろ30代後半に突入しているケースもあり)、という宝塚のセオリーにのっとってティーン男子という設定からは程遠い推定年齢30代半ばの女子に配役されてしまうわけだけど、まあ、東宝版も城田優が演るみたいだから、実年齢はあまり気にしなくてもいいし、女子の声なあたりがむしろ少年っぽくてハマっていたような気がする(アニメ版『ろろうに剣心』も宝塚の人が緋村剣心をやってたと思うんだけど好きだったし)。いやあ、推定年齢33〜34才の女子(タカラジェンヌは年齢非公表だけれど、音楽学校の入学年限が決まっているのでだいたいの年齢は予測可能)によるロミオ、万歳。…そんなわけで、宝塚歌劇”というよりは、“実験的にガールズオンリーのカンパニーにした、でもお金はきちんとかけた華やかでわかりやすいミュージカル”という印象を受けた宝塚歌劇団版『ロミオとジュリエット』でした。うーん、ガールズオンリーの少年ものと言えば古い邦画『1999年の夏休み』を思い出すなあ、拙さや不自然さが不穏さにつながる、好きな映画だった…。

1999年の夏休み [DVD]

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とりあえず、これだけ「もう1回観たい!!!」と思わせたのは、ユーミンの『シャングリラ』以来で、だからきっと「リピートが基本」な演劇業界よりも、J-POPのチケ難コンサートに近いんだろうなと思う次第です。もう1回観たいなー。むしろ東宝ミュージカルみたいに1年かけて主要都市で公演してほしい、そんな公演でした。頑張って観て良かった。タカラヅカも少しずつ変化・進化しているという事なのでしょうね。



【以下ネタバレ】 内容的には定番のストーリーに加えて「死」と「愛」という役がこのミュージカル独自のものとして出てくるのだけど、個人的に、「死」という存在が良かった。小学生時代に初めてこの物語にふれた時から疑問だった「なんで神父の手紙がうまくロミオに届かなかったのか」という部分が、すごくわかりやすく説明されてたから。なるほど、「死」が一般市民に化けて取り上げちゃったのねー。宝塚全般に言えるのだけど、そういうストーリーの単純化は気楽に観れて嬉しい。そして「どんな原作でも無理矢理ハッピーエンド」は後味が良くて大変よろしい。今回も、ロミオとジュリエットが、スモークがバンバン焚かれた”死後の世界”で愛のテーマが流れる中楽しそうに踊りまくっていて、後味抜群。しかしこの“スモークが焚かれた死後の世界で結ばれる恋人たち”という演出、宝塚で悲恋を上演する際には何十年も前からある“形”らしい。そう言えばビデオで見た『エリザベート』も、別に悲恋ってわけでもないんだけど最後、死んだエリザベートエリザベートに恋をする死神がスモーク焚かれてる中で思いっきり抱き合って散々ベタベタした挙句、ふたりで手をつないでさらなるどこかへ旅立っていたし…元のウィーンミュージカルでは“死神はようやくエリザベートに口づけし、あとはさっさと助手の死神ダンサーズに引き渡す”みたいな感じっぽいんだけどなあ。悲劇好きな日本において、なぜか敢えて原作ねじ曲げてでもハッピーエンド(スモーク付)。本当に「あたらしい伝統芸能」なんだろうなあ…。


ロミオとジュリエット (新潮文庫)

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