おとめ、開封 〜熱いぜOG編〜

もう2か月近く前の話になってしまうのですが(4月に書いていて放置していた文章なので)。


今住んでいる国で、おそろしく安い月謝(スタジオ代を含めるとお小遣い稼ぎにもなっていないような。間違いなくマダムの暇つぶしボランティアの領域)でダンスを教えてくださっている元宝塚スターさんもゲスト出演するというウワサの宝塚OG公演を観に、梅田まで行ってきました。「某カード会社の請求書に挟まっているチケット斡旋のチラシに宝塚のOG公演が載っている」とskypeで母が興奮して話してきた取ったチケットで! 母が抑え続けてきた宝塚への情熱が堂々と復活していることが垣間見える一幕である。


いやあアツかった、OG公演。激アツ。って自分はもちろん母だって完全に見知らぬスターさん(まあ、TVでお見かけするかたもいらしたので、まったく知らないわけではないのだけど。)による前半はかんたんなお芝居で、幕間後のショーは各々が活躍した演目の再現シーンがメインだったようなのだけれど、別にまったく問題なく楽しかった。当時の濃いネタが多そうだったので、これがもう少し最近の宝塚を見慣れた人や、ここ10年のファンの方だと「ついていけない感」が出てきてしまうのだろうけれど、私はもちろん母ももはや初心者状態なので、問題なく楽しめた。
お芝居ではブリブリの女子ファッションで顔が小さくて足細くて長くて巨乳なリアルバービーちゃんみたいだったもと男役さん(現役時代はサラシでガッツリ巻いて“胸板”にしてたんだろうか、あの胸)もガッツリ野太い声にキザな仕草で歌い踊ったりとかね。いやあいいね、それにしても宝塚の男役さんって、間近で見ると大抵の人は雑誌モデル顔負けのスタイルなんだなあ、誰もかれも。少なくとも、2000年頃に私がバイトしてた赤文字雑誌のモデルさんには負けてないと思う、ちっとも。


っていうかふと周囲の様子を見ると、みんな、目頭を熱くしているー!オペラグラスを見ながらハンカチを目に当てる人が続出というかむしろスタンダード状態。


私などは「キャー、先生かっこいー★」「他のかたも本当、年齢を感じさせずステキー!」などとひとりでヒャッハー状態だったのですが、各々のスターさんに少女時代を捧げてきた(と思われる)ファンの皆様にとってはそんな軽いモノではなかったらしい。終演後、出口に向かって歩いている時に聞こえてきたおしゃべりなどは、「私、明日も明後日も泣く自信がある…」「今日は胸が震えて眠れないと思う」「生きてきてよかった…!」「しちゃおっかな、遠征…」など、宝塚に興味を持つ前から何となく好きなweb連載ヅカヲタまんが『ZUCCA×ZUCA』さながらの熱い声ばかりだった。あのバカバカしいほどの暑苦しさってマンガだからじゃないんだなあ。皆が名残惜しく劇場前を立ち去りがたくしているのを見守りつつお茶していたら、またしても出待ちに巻き込まれてしまったというオマケも付いたのだけれど、いやあ熱いぜOG公演。


そして、いくつか、いかにもタカラヅカ的な暗黙のルールにも気づいてしまった。

・多少、おおむねアラフォー世代とは言え多少年齢幅のあるもと男役トップスターさんがゲストを含めて5名、
娘役トップスターさんが3名出ているが、その8名に関しては、全員が似たような衣装でも必ず少しずつ凝った装飾が含まれている
・カーテンコールには宝塚名物の階段パレードはないものの、出てくる順番は「その他大勢⇒たぶん3番手⇒たぶん2番手⇒娘役トップ⇒男役トップ」と、ご本人たちの経歴や最終職位(?)を知らない自分や母でもハッキリわかる雰囲気
・レギュラー出演の男役トップスターさん4名は、キッチリ年次順に敬いあっている様子がハッキリわかる。最上級生(“音楽学校”が大前提の演劇集団だからそういった学校的な用語が多い模様)だったゲストさんなどは既に御大状態
・特にスターさんに関しては、意図的か否か、キッチリ年次順に楽屋から出てきたように思う

というわけで、「うーん、きっと、あの辺の人たちは2番手とか3番手だったのよね…いつまでも2番手は2番手、その他大勢はその他大勢、厳しい世界ね…。」と母はつぶやいていたのですが、それはそれで彼女たちにとっては熱く楽しい青春、そして社会人生活で、遠くにあれば美しい思い出として時おり大切に取り出したいものなのだと思う。
だって、“その他大勢”として出ていた役者さんたちも、十分キレイでカッコよくて上手なのはもちろん、何よりも、本当に幸せそうな顔をしていたから。



「ところで、そもそもあのその他大勢もみんな卒業生なの?ママが観た頃のOG公演は、現役生がお手伝いで出てきていたものだけれど。まあ、今の子はすぐに結婚するわけでもないし、出られる人も出たい人もいっぱいいるのかしらね」
…母よ! OG公演などというものは初めてかと思いきや、まさか行ったことがあるの? 「うん、そうそう、たぶん50年近く前ね。だって中日劇場にも来てくれたし。鳳蘭も出ていて、素敵な子だなあって思ったわあ。あ、もちろんちゃんと久しぶりの男役姿も見られるのよ

50年前からOG公演があったとは…! 
っていうか母よ、「もちろん男役姿」って、「退団してしまえば、好きだった人が東宝ミュージカル『風と共に去りぬ』に主演したところであくまでもそれはスカーレット・オハラ役であって、レット・バトラー姿を観ることは二度とかなわないのよ…!」という名言は何だったのか…!
ああもう、恐るべしヅカ商法。何しろ遠いのでいろいろと難しい事も多いのですが、アラフォーに差し掛かってからのライフワークとして、こそこそと周囲を探っていきたいと思います。

ZUCCA×ZUCA(2) (KCデラックス モーニング)

ZUCCA×ZUCA(2) (KCデラックス モーニング)