ダンディズムとはそういうものさ

習い事+αの送別パーティーが先生のご自宅で開催された。前にもお邪魔させていただいたことはあるのだけれどそれはそれは素敵なお家なのだとか、お義母さままで総動員でお料理を用意してくださったとか、先生が趣味のグランドピアノを披露された際、同じ某国駐在妻にして“現役時代からの先生のファンクラブ会員”であるSさんが死ぬほど嬉しそうにその傍らで座って聴き入っている様子を見ていたら、なんだか「ハンマープライス」の公開録画に立ち会ってしまったような気分になったとか、ネタにできそうなことは死ぬほどあったのだけれど、ものすごーく驚いたことがあった。


「やー、ここにお酒も置いてあるから好きなように飲んでね。ちなみに最近私がハマってるのはこれとこれを混ぜてライム入れて飲む感じで…」と、リビングのバーカウンターに座ってにこやかにほほ笑む先生がべらぼうに、びっくりするくらい気障でカッコよかったのだ。先生ご自身は白シャツに白黒チェックのカプリパンツなんていうそこそこ爽やかな、VERYやSTORYでカジュアルなホームパーティを開く素敵な奥様的な組み合わせのファッション(それも、私ならとてもそんな服は選べないけれど。だって汚れるから)、そして場所は夏の光がきらめく美しい一軒家のリビングなのに、あたかもハードボイルド映画に出てくる“秘密のバーで、限られた者にだけ重大な情報を教えてくれるバーテンダー”のようで!


実をいうと、うちのように新築の超狭いマンションをわざわざ選ばない限り、この国においてバーカウンターがある部屋に住むことそのものはたかが日本の駐在員ふぜいにとってもそんなに難しくはない。そして、出張者がいろいろお土産をくれるお蔭で、どのお宅のバーカウンターにもそこそこのお酒が並んでいる。しかし、失礼ながらどのお宅のご主人様よりも、息子の教育問題に熱心な一児のママである先生のほうがカッコよかった。…なぜだ。何気なく広げた手やお酒のビンを持つ手つきがきっとほんの少しだけ気障で美しく、それが本人も望んでいないくらいキッチリ身についてしまっている感じなのかなあ、と後から分析してみた私である。うーーーーーーーん、すごいんだな宝塚の男役って。辞めて十数年の先生でさえこれなんだから、現役の皆様はきっと、さぞかし「女子の思う“カッコいい男性像”」を完璧に具現化することを考えながに日々の生活を送られているのだろうなあ。


そこでうっかり見てしまったのが、『ZUCCA×ZUCA』という宝塚にハマる女子たちを描いたweb4コマまんが。結婚相談所を訪ねた妙齢のヅカファン女子が、相手の男性に求めるものとして「ダンディズムのある人がいいです。絶対」と言うシーンを見て、本当は笑う所だと思うのだけれど今日の今日だっただけにううーーーーーーんと唸ってしまった。ダンディズム!知ってはいるけれど聞き慣れない単語だけれど、それだなきっと。そういう事なんだな、あのさり気なくにじみ出る、ちょっとだけ秘密めいた気障なカッコよさは。そしてそれはきっとヅカ用語なのに違いない。


…でも実際問題、「ダンディズムのある人」って、すごく難しいと思うの。繰り返すんだけれど、駐在予定なんてないはずの会社でうっかり駐在員になってしまったうちのオットを除くたいていの駐在員はそれなりに海外慣れしていてマナーも心得ていて素敵な仕草を身に着けているはずなのに、そんな彼らよりもずっとダンディズムに満ちていたもん。

ZUCCA×ZUCA(4) (KCデラックス モーニング)

ZUCCA×ZUCA(4) (KCデラックス モーニング)