ブエノスアイレスで横浜を想う

未だに旅行+写真ブログの方では5月のフランスから抜け出せていないので、ブエノス雑感を覚え書き。というわけで写真はないです。


ブエノスアイレスは日本の旅行会社が書く安っぽいコピーそのままに、私にとって哀愁の街だ。Hop-On, Hop-Off形式のバス(運行タイムテーブルに難アリ、でも半部以上のバスでは日本語音声イヤフォンガイドも選べて便利)で解説が流れてくるときにお愛想程度にBGMになっている「リベルタンゴ」を筆頭とするタンゴ・スタンダードとか、観光地化というより無料テーマパーク化しているカミニート地区でストリートミュージシャンが演奏するバンドネオンのアドリブ演奏の音色は勿論、普通の人がスルー、もしくは「お洒落な新市街」として認識するであろうプエルト・マデーロという地区ですら、私にとっては懐かしくなる風景。


何て言うか、ソックリなんですよ、横浜のみなとみらい〜赤レンガ倉庫付近に。古い赤レンガの港湾倉庫をおしゃれな商業施設に再開発したその脇に、そこそこモダンでちゃんとした、若干奇抜な高層ビルが並んでる。そう、思わずホームシックになるくらいに。


誰が呼んだか「南米のパリ」という勝手なオシャレイメージが独り歩きしてるのも、それっぽい。一瞬おっしゃれーって思ってもいざ冷静になると別に手が出ないっていうか。そこそこオシャレな店構えの店やショッピングモールが、そこそこかわいくて高くないものを売ってるんだけどね。


マラドーナとかテべスが在籍したサッカークラブであるボカ・ジュニアーズの応援なんかを見ていても横浜を思い出す。wikipediaにも『Jリーグコンサドーレ札幌FC東京横浜F・マリノスヴァンフォーレ甲府アビスパ福岡等の応援歌がボカ・ジュニアーズの応援歌を借用して歌われていることが多い。』なんて書かれてるけどまったくその通りで、特にマリノスに関しては、試合前・試合中ロングチャント・勝利時チャントと定番3曲はすべてボカだ。他のチャントやコールは日本代表で使ってるやつが多いし、「Boca de mi vida」「Dale Dale Boca」「Dale Boocaa, y dale dale Boocaaaa」とyoutubeで検索して頭に入れて行けば何となくマリノスの応援はできる、しかもかなりゴール裏寄りの場所で。

あと、私が行ったときはたまたまリケルメっていう代表でも頑張ってたベテランが退団表明した時で、サポーターがなぜかチームカラーのパラソルを持ってクラブハウス前で“辞めないでデモ”をしているという変な時期だったのだけど、それですら、松田直樹を切った時にクラブハウスに数百人単位で人が押し寄せる(しかもなぜか、一部はパラソルを持って)現場をこの目で見たのを思い出して切なくなった。マリノスタウンに徒歩で行ける駅が通勤利用駅だったんだよね。試合の出来の悪さにバスを取り囲むサポは世界各地にいるけど、選手の人事でクラブハウスを取り囲むって、イングランドでもドイツでもブラジルでも聞かないし、知らずにマインドまでアルゼンチン化してたのか。


そんなわけで、哀愁とは無縁の、庶民派クラブのサッカーのサポーターすら私にとっては日本を思い出させるブエノスアイレスだった。まあ、ボカのスタジアムは横浜で言えば寿町(日雇い港湾労働者と風俗店、不法外国人のお店が多い、いわゆるドヤ街ってやつ)付近みたいな場所にあるんだけどね。うん、でもあの景色はあの景色で横浜っぽいんだな。逆にスタジアムが治安維持に一役買ってるっぽい感じだったから、ドヤ街を何とかしたいなら寿町に三ツ沢みたいなスタを作るのもアリかも知れない。今、J2の横浜FCとさらにYSCCっていうクラブまでJFLに上がってきて三ツ沢も飽和状態っぽいし、かと言って日産スタジアムは普通のJ1リーグ戦だと、入ってる人数以上にガラガラ感がすさまじいからなあ。


まあ、とは言え、横浜で住んでた部屋には、今はもう別の人が住んでいて、戻る場所はどこにもないんだけど。