ハハカエル

母、日本に向かって出発。なんだか知らない間に、目に力がなくなったなあと思う。方向とか英語表記とかに対する勘も悪くなったし。少なくとも前いっしょに南米に来た2005年、ペルーのクスコで高山病でふらつく私を引っ張って遺跡を歩いていた母ではもうないんだとハッキリわかってしまって、ものすごく切なくなる。まあ考えてみればあれから7年も経つんだなあ。母も年齢的には孫とグアムくらいに行っている方がお似合いの年齢だし、身体も急にガタがきているし、ひとりで南米から30時間近くかけて(もちろんエコノミーで)日本に帰すなんて無茶してるかなあと思ったりする。


それに対してうちの夫は、「自分たちの縄張りを荒らされる」という警戒心ばかりで、「年寄りをいたわる」という精神が根本的に欠けているようにも感じた。「親をうやまう」なんて期待してないよ、「嫁の親=他人」って思ってるのは最初から明白だし(っていうか「妻の親を大事にする」精神を持つ男はそもそも逆に“一人っ子”なんて難アリ物件には手を出さない)、そもそもうちの両親なんて欠陥だらけの人間だから「うやまう」のは難しいのなんてわかってるし。でも、そこまで露骨に愛想のない態度していいのかなあ、それって人間としてどうなんだろう。


昨日までは、かろうじてベランダで吸うものの吐く煙はそのまま部屋に持ち込んでくるヘビースモーカーの母に辟易していたはずなのに、いざガランとした母の居室であったところ(まあ、もともとは物置部屋なわけだけど)に入ると淋しくなり、ふと不安になる。何だか、遠いところに来すぎたみたいだ。