既婚者という名の美容液

付録のアンテプリマライセンスのミニトートバッグが欲しくてネット買いしておいた『25ans』4月号を今頃読んでるわけですが、いやあ面白いっすね、ヴァンサンカン。「ママ友」とか「女医」とかいうキーワードからわかる通り決して25才のお嬢さんを対象にしていない(高級ホステスとかでも違うだろーという感じ)というか、誰を対象にしてるかわからないぶっ飛びっぷり。とりあえず、高級ブランドに縁のない海外暮らしをする身には、海外の王族の話なんかも教養の一環として案外サラリと面白く読めます。齋藤薫のエッセイとかもいい感じだし。そして、当日記でもひさびさの続き物になっている宝塚歌劇団の販促連載記事まである!その名も「宝塚という名の美容液」だって!!!


しかし私は、敢えて苦言を呈したい。この雑誌の読者が既婚者のみならいいんだけど、もしまだ結婚していない女性で、しかも男性との結婚を望んでいるのであれば、やっぱり(いくら“男役”とは言え)同姓ではなく、実際に恋愛対象であろうがなかろうが生身の男性を女性ホルモンの原動力としたい。なぜなら私のただ1回の宝塚観劇経験とたった1人知っている往年の男役トップスター(今の本業は、たぶん一応主婦)を併せ見る限り、“男役”のべらぼうなカッコよさは不必要に過剰だからだ。過剰摂取はよくないもんね。まあ、ヴァンサンカンって過剰な内容だからそれで合ってる気もするけど。


一方、今回日本に帰ってきて会った未婚の(そして男性との結婚を望んでいる)30代も半ばに突入した友人たちのオトコネタから共通で出てきたキーワードは“既婚者”だった。いいなあと思ったり2人で食事に行っちゃったり厄介事に巻き込まれる予感がしたり、まあ色々と楽しそうな様子。わかるわ、私もそんな時期、あったし。まあ、“男役”よりは現実的だしいいでしょう…と思いつつ、敢えて言いたい。「既婚者は美容液に留めて!!!」と。


経験上断言できるのだけど、“男役”よりは庶民的でリアルなものの、“既婚者”というのは得てして、同じ年齢の未婚男性よりもカッコいいのである。なにしろ、彼らは結婚したことがあるのだ。とりあえず籍だけ入れたパターンは別として「プロポーズ」「相手の親への挨拶」「婚約/結婚指輪の購入」「結婚式というプロジェクトの企画・実行」など、面倒くさくて仰々しいことをそれなりにやって来ている。特に結婚式なんかをちゃんとした人は、たった一日とは言え、“花婿”になったことがあるのだ。この“花婿”は不必要なまでに過剰にカッコいいことを要求されるもので、身長170センチを切っていようものならヒール付シークレットドレスシューズを履かされたり、大勢の前で見つめ合って愛を誓わされたりキスシーンを演じさせられたり、和物は和物で羽織袴で神社の森を行進したり、「ハワイで簡単に挙げた」というケースでもアルバムを見るとモレなく「海岸で花嫁をお姫様リフト」「ドレスとタキシードのまま手をつないで夕陽が沈む海に向かってダッシュ」などという過剰な演出を堂々とこなしていたりして、要するに“男役”にも程近い一日をうっかり過ごしたことがあるわけである。そりゃ、ナチュラルな未婚男子よりもキザな部分が無意識的に多少身についてしまっていても当たり前なのだ。そしてそれは、時として必要以上にステキににじみ出てくるものなのである。


生身の(それにしては少々カッコいい)男との微妙な関係を楽しみ、女子度を上げる。そこは敢えて否定はしない。ついでに私は、「数年間の不倫期間を経て結婚した」という女性の話を身近なところでいくつか知っているので、リスクを取った見返りが来る可能性がそれなりにゼロではないとも思う。でも、自分が知ってる成功例の場合、スタート時点では女の子のトシも皆20代だったんだよね。リスクを取るには、30代半ば過ぎという年齢は、ちょっと(いろいろな意味で)時間が惜しいかも…と思ってしまうのである。
素敵(に感じてしまう)な既婚者との秘めたあれこれはあくまでも、日常をキラキラさせる美容液に。踏み台にして、さらなるトキメキをねらって育てていって欲しいものだ。


…え、私?そりゃ、墓まで持っていくわよ、既婚者の人たちに思わずときめいたあんな出来事やこんな出来事。そう、ちょっとした記憶の美容液としてね。