つれづれネットサーフィンの恐怖

ようやくもうすぐ退職なわけですが、どうしよう、私としたことが怖いのだ。『ブラジルの駐在員夫人生活』なるものに、驚くほどおびえている。稼ぎがないとかそういうの以上に、未知なるゾーンって感じで。



≪こわいこと・その1≫

駐在事前ガイダンスによると、ブラジルで自動車を運転するなら、赤信号で止まっちゃいけないらしい。強盗に襲われるから。実際、うちのオットが通勤用にもらえるクルマはごくごく普通のファミリーカーなのに防弾ガラス仕様だし、そう言えば前職でかじったブラジル仕向け専用仕様は消火器を積まなきゃいけないとか、とにかく強盗対策がものすごかったのも思い出した。つまり、それだけ「出る」ってことだ。
“首絞め強盗”全盛期のスペインでも、政情不安気味なペルーでも平気だったけど、暮らすとなるとちょっと違う気がする。「夫人」つっても、運転手つきの車がもらえるような待遇ではないし。

そこで、非メジャー国を旅行する前には必ずチェックするバックパッカー向け掲示板を見てみると、こんなのがあった。

ブラジルのタクシードライバーも・・・ メーターで賃送しているのに難癖をつけて余分に料金を請求! 表示金額以上払わないと言うと警察を呼ぶと恫喝(唖然)
まあ、普通の日本人だとその時点で脅えて払っちゃうんだろうけど、ドライバーの方が違法行為なので呼びたきゃ呼びやがれて言うと観念したようでなんとか落着。 日本人て完全になめられてますよね。


そもそも「表示金額以上払わない」「呼びたきゃ呼びやがれ」なんて英語でしか言えないよ…。
実はポルトガル語の勉強を昨日から始めたんだけど、これが驚くほどアタマに入っていかない。恐るべし、老化。


≪こわいこと・その2−1≫

名前をなくした女神』というドラマの中吊り広告が、やや渋みのあるフューシャピンクにモノクロの写真で、非常に私の好みだ。キャッチフレーズは「ようこそ、ママ友地獄へ。」…ふーむ、これって要するに、ママ友同士は「●●ちゃんママ」みたいに「子どもの名前+ちゃんorくん+ママ」と呼び合って、お互いの名字・名前では決して呼ばれないって意味ね。たぶん。ドラマ、見てないけど。

実は私は、結婚を機に転職したくせに新しい職場でも旧姓を使っている(確定申告があったから源泉徴収書は新姓にしてもらっているけど)。しかし、今後はとりあえず専業主婦。ビザも永住許可者の帯同ビザだから、今まだ会社で呼ばれている、呼ばれなれた「▲▲さん」じゃなくて、オットの会社関係のイベントの度に面白がっていた「■■さんの奥さん」になるわけだ。帰属するものが「私自身」じゃなくて「夫」になる。

軽く恐怖だ。

…と思っていたら、さらなる恐怖を呼び込む文章を見つけた。どうやら、駐在員の奥様社会は「■■さんの奥さん」性が普通の社宅文化以上に明確に出るものらしい。しかも、明らかな階級を伴って。

ピラミッドの頂上には日本国特命全権大使夫人が君臨しています。

でも、日本から皇室の方や政治家妻が来れば、大使夫人は彼女らに尽くさなければなりません。

大使妻の下に都市銀妻と大手商社妻が控え、大手メーカー妻やゼネコン妻がその下に厳かに控えております。
下請けメーカー妻や現地採用妻、セカンドライフ妻や現地結婚妻もピラミッドに組み入れられてしまうこともあります。
無職現地在住やバックパッカーカースト外なので気楽です。
国連機関妻や大学教授妻はピラミッドから少し離れた位置に立って彼女らを眺めています。


うちは下請けメーカー妻。うーん、これってカーストのほぼ最下層じゃないか。仕える人が多すぎで辛いなあ。一日の大半はご機嫌伺いか…(ちなみに友達でも、ベルギー駐妻のご主人は大手メーカーというかうちのオットの会社の親会社、シンガポール駐妻のご主人は大手商社に並ぶと思われる大手船舶と、うちよりは上にいそうだ。比較的のびのびニュージャージーでやっていた従姉のご主人もお医者さんで当時研究員、今はめでたく日本で助教授の“大学教授妻”だしなあ)。心身ともにハードワークが予想される。 ホームパーティーに出せるような料理なんて作れないし、それならあとは気遣いと体力でカバーするしかないじゃないか。


≪こわいこと・その2−2≫

駐在員の奥様世界に関して、さらにこんな文章を見つけた。

タイの首都バンコクでは、同じ会社の駐在員の奥様が月1回集まって「奥様会」を開く。 場所は、高級ホテル内のレストランなど。
 
そこは、夫の地位で、奥様の地位が決まる、恐ろしい世界。
 
みんな、奥様会のためにワンピースを新調し、オーダーバッグを持参し、お披露目する。
 
オーダージュエリーをお披露目する時は、ちょっと注意が必要。
社長夫人や部長夫人に対して嫌味にならないように、見せる必要がある。


うちはブラジルの現地法人の駐在員の中で最若手となる予定。うーん、やはり厳しい。サンパウロに奥様会が存在したら、心身どころか金銭的にもパンクだ。これはもう、「その1」のハードルを越えるだけの語学力を身につけてパッカー方面に振れ、カーストを脱出するしかない、かもしれない…。