架空のスキャンダル

ある事件がきっかけで「私の男関係を一切聞くな、触るな、口出すな」という強烈なオーラを両親に対して発し続けて早●年。いつも通り休日、家を出て行こうとする私に、父(ニート)は言った。どうやらやる事がなくて辛抱できなくなったらしい。
「おい、今お前はどういう男とつきあっているんだ」「どうだっていいでしょ」「何にしても不倫だけはするなよ」

もともと極度の男性不信傾向があった私は、確かに20代前半のある時期、複数の既婚者を飲み友達にしていた事実がある。当時の意図は明白で、単に恋愛というものを避けて通っていたのだ。同世代の同僚は下手にサシで飲みに行ったが最後、何を勘違いされるかわからない。その点既婚者なら、たとえ変な気を起こされた所で「フリンは駄目ですよー」とちゃかして逃げる事ができる。しかも、大人なだけに仕事の話なんかしていてもダイレクトに役に立つ話も多い。…というわけで、そういう時期があった事は否定しない。

でも、今は違うよー。今の私の年齢で妻子持ちと遊んでたら、それこそ「フリンしてるからケッコンできない」って噂があちこちで立てられちゃうし。何よりそんなローンと子供の教育費にあえぐ妻子持ちなんかより、同世代の独身男子の方が圧倒的にお金持ってるし楽しいしシゴトの悩みだって等身大だもん。あと、同業者でこの年齢まで独身の男って、細かいパターンの違いはあれ変にギラギラはしてないから、色恋ナシでニュートラルに話せるし。

…しかしよく考えたら父の思考回路は、残念ながらもっと明確だった。実はいつまでも嫁に行かない娘の身を案じてでも何でもない。フィギュアスケート安藤美姫に匹敵するかそれ以上に大好きな山本モナの不倫騒動第2弾が、恐らくはアタマに焼きついて離れないのだ。道理でこの数日、ボヤーッとTVを見ては「バカだなあ、モナは…」と悲しげにつぶやいていたと思ったよ。ミキティがシーズンオフの今、モナまで出演自粛しちゃったらうちの父(ニート)に生きがいを見つけるのはかなり困難そうな今日この頃である。…でもとりあえず、娘が外出しようとするたびにあれこれ言うのだけはやめてよ。