車と結婚の類似と相関/恋はクルマにつれ、クルマは恋につれ(Part3)

1〜3分に1本というありえない間隔で運行し、だからこそちょっとした事故ですぐダイヤが乱れていた中央線沿線にサヨナラして愛知県に本社を構える会社で勤務すること早●年。20分に1本来れば上出来な電車や1時間に1本しか来ないバスを駆使して自分のクルマというものを持たずにここまで来るとは、いやはや我ながら見上げた根性だなぁ…と思う。

買おうと思ったクルマ、恋に落ちたクルマが今までなかったわけではない。
パールピンク色で衝撃のデビューを飾ったトヨタ・ヴィッツ、黄色いフォルクスワーゲンニュービートル、あっと言う間に日本市場から姿を消してしまったフォルクスワーゲン・ルポ、パプリカ色やソリッドで渋みのあるブルーやグリーンがなんとも新鮮だった日産・マーチに「クルマ=雑貨」という概念をわかりやすく打ち出したフィアット・パンダ・アレッシィ、シートのスマイルくんに衝撃を受けたダイハツムーヴラテ。同じダイハツの軽ならとぼけた顔で内装はエレガントなスポーツカー・コペンなんかも大いに恋愛対象であり続けている。
リアルクローズ的なコンパクトから離れれば、ルックス・乗り心地ともそのエレガントさにすっかりやられてしまったベンツ・CLK、「彼が乗ってればそりゃカッコいいけど、それより私も運転したい」と思ったBMW・3シリーズワゴン、虚栄心(エセ・インテリ気取り&密かなプチセレブ願望)を大いに満たしてくれる上社会的にも好意的に迎えてもらえそうなトヨタ・プリウスなどなど、それはそれで色々あった。ブラウンメタリックのトヨタハリアーハイブリッドなんかはその最たるものだったよなあ。その一方ではアルファロメオ156、ブレラ、アウディTTみたいな「ルックスのいいダメ男」感漂う路線にも大いに心ひかれたりもしたり、まあかなり節操なかったとも言えるけど。

じゃあ、何で結局一度も車を買わなかったのか。答えは簡単だ。私は思い切りが悪いのだ。ローンや故障や事故みたいなリスクを背負う事を考えるとどうにも怖くて、何となく逃げていた。
そして恐らく、もう一つある。決定打になる「運命の1台」に、巡り会ってこなかったのだ。恐らくではあるが。
映画みたいな恋でも腐れ縁の挙句でもいい。モデルチェンジや決算期の大幅な値引きみたいな「偶然のきっかけ」が大いに作用してもいい。車じゃなきゃ通えない土地への転勤でもいい。とにかく、中途半端な気持ちで買う事だけはしたくない。それだったら、車なんか買わずに1時間に1本しかないバスに乗るための効率いい移動ルートや会議スケジュールを立てればいいか考えて、浮いたお金で旅行の一つでも行った方が余程生活が充実するというものだ。無理に買うなら、ない方がマシ。少なくとも今まではそう思っていた。

…それにしても、何だかそっくりそのまま私の恋愛観&結婚観を語ってるみたいな文章だなあ。あらためて驚き呆れてしまう。恋はクルマにつれ、じゃなくて車・ニアリーイコール・恋と結婚。運命の1台が現れるのか、それとも寄る年波による人間の軟化と世間体に負けて適当に手を打つのか。まるで他人事みたいに『こうご期待』の話ではある。