恋するクルマ 〜レガシィツーリングワゴン

名古屋に転勤してきて早2年、東京に戻れる見込みは未だ具体的になっておらず…のけんじ(仮名)が「クルマ買うたでぇ」と久々に電話してきたので、早速乗せてもらう事にした。
けんじと言えば高給取りで有名な某総合商社M勤務、でも仲間内でのトトカルチョやら徹マン等で常に金欠、「クルマもなしで名古屋で女にモテようなんざ笑止千万!!!」とせせら笑った私に対して何とわずか3日後には車を入手してきた、しかしその車は若かりし頃さんざん私達バカ女子大生(当時)のアッシー君にもなってくれた15年落ちの改造しまくりレガシィ、所持者はけんじの同期イナガキ氏(仮名・既に既婚)だった通称イナシーだった…という男である。こうして並べてみると恐ろしいほどの矛盾を抱えた奴だが、私はけんじの彼女でも何でもなくタダの腐れ縁の友人なのでそれ以上言うわけにも行かない。
ところで驚くべきはその車だった。イナシーと同じスバル・レガシィ、しかし何と新車だ。 2年前はたかだか60〜70万円の頭金すら払えなかった故のイナシーだったくせにどうした、その出世っぷりは。
「株で儲けてん、M菱商事。いやー、やっぱM菱っすよ!!!」 …バブルで結構な話だけど、けんじ、キミの勤務先は総合商社MはMでも違うとこじゃなかったか。いや、いいけど。

私の周辺にはどういうわけだか異常なまでにレガシィ乗りが多いので今回のけんじレガシィの詳細を敢えて頑張って細かいところまで明記すると、レガシィツーリングワゴン・07年イヤーモデル・2.5リッターアーバンセレクションというやつである。微妙にケチってDVDナビを付けて総額300万円程度。一気に現金で買ったんだそうだ。いやあ、けんじも「バブリーマン」の端くれだったのねえ。
春先にも少々その兆しが見られたメタボリックがさらに進んだ感じのけんじ(相変わらず彼女なし)が乗ってきたその黒いクルマは、黒いせいかかなり凶悪な顔つきをしている。ところがいざ乗ってみると、インテリアとしてはスポーティでモダンなのにノーブル。言い過ぎといえば言い過ぎなんだけど先代アウディA4・A6ののS-Lineっぽい感じで、個人的にはすこぶる好みだった。
エンジン音がこれまたものすごく感じがいい。適度に力強くてでも静か。発進させてみると、助手席に乗っている限りは足回りは軽そうだし、ワゴンで2.5リッターなんてなんか本当にベストな感じだし、運転してて多分ものすごく快適で楽しいんじゃないかなあ。MTからATになった事もあって「快適すぎて眠くなるねん。イナシーが懐かしい…」なんてほざいてたけど、いや、これはこの先10年飽きずに乗れるクルマなんじゃないかな。5月にまたイヤーモデルが切り替わったみたいだけど、どっちにせよモデル末期に近いから品質もMAXに近いんだろうし。もしこの先けんじが結婚することがあったとして奥様の買い物で使うとしても決してトゥーマッチじゃないから、そういう意味では堅実だと思うし。カジュアルで若々しいオトナ、ってイメージがこれだけピタッとはまる車、たぶん滅多にない。
雨だったし私もけんじも翌日予定があったからサクッと近所で回転寿司だけ食べて別れたけど、いつにも増してベタ褒めした挙句、私の誕生日が過ぎてけんじが加入した保険の対象年齢に達する頃にはまたドライブ企画を立てようね、と約束する。けんじの東京バブリーマン仲間(バブリーマンらしくアウディのTTやらBMW・Z4やらベンツCクラスワゴンやらポルシェ・ケイマンやらと言った、恐ろしいほど「いかにも」なクルマに乗ってるらしい)は「わざわざまたスバルを買わなくっても!!!」と揃って酷評したらしいけど、ぶっちゃけ、車格的に同等(値段とブランドを考慮しないって意味です)の外車のほとんどよりも飽きが来なくて、しかも楽しいんじゃないかなあ。これはいい車だよ。