基本のキホン 〜フランス旅行記1

moeringal2008-05-03

初日のニースで、いきなりスリに遭った。「ざっと数えただけで20回以上・20ヶ国の渡航経験で一度も“そういう目”に遭った事がなかった」「フランス=今を去ること●年前、初めて個人で長期旅行した場所」「ニース=世界の保養地・観光地=比較的安全、という固定概念」等々、我ながら慢心していたんだとは思う。
場所は、ストラスブール以来フランスのエコ対策の一つとして話題になっている、開通したばかりだというスタイリッシュな市電。目抜き通りのメドサン大通りを通るその電車に、出来心で乗ってみようとしたのが間違いだった。電車はやたら混んでいて、たった300メートル、時間にしてわずか3分少々の間に、事件は起きていた。車窓からZARAを見つけて、降車し、店に入った瞬間、ふとバッグの中を見たら財布だけがキレイさっぱりなくなっていたのだ。
持っていたバッグは、「しっかりボタンを閉じていて」「きちんと肩にかけて口を脇で押さえていた」のは事実だったけれども、「ボタン閉じだから小さな手が入るだけのスペースは空いていて」「サイズの割に中身は財布とハンカチと携帯だけ、と実に見やすいスカスカの状態で」「しかもバッグも財布もディオール」だったのも事実だ。普段は愛想のないプラダの黒いショルダーバッグを前にかけているのに、まあ正直浮かれていたのだ。思えば乗車直後、後の乗客からぎゅうぎゅう押されたあの時が『決定的瞬間』だったのだろう。ファスナーつきの内ポケットに入れていたパスポートが無事だったのだけがせめてもの救いとも言える。
スリの立場的には、最初からカモがネギしょって現れたようなものだったであろうとは言え、それにしても、敵ながらあっぱれ、鮮やかな手際だ。お蔭でその後は、通りすがりのプチホテルのマダムに電話をお借りして海外旅行保険のコールセンターに電話をし、コールセンターの受付嬢にカードの盗難連絡先を聞き、とりあえずカードを止めるので一時間。その後、怖くて仕方ないのでとりあえずホテルに戻り、プラダの黒ショルダーにカバンを変えてから、保健センターの人のアドバイスどおり国際警察署まで被害届の証明書を取りに行っていたら、シャガール美術館に行く時間がすっかりなくなってしまった。唯一行けた観光地は展望台だけ。あー、もうホント…。
さらに調子の悪い事に、当日は土曜日。銀行も郵便局も休日、泊まっている3つ星ホテルは大型チェーンにもかかわらず両替取り扱いなし、近所のさらに大型チェーンの4つ星デラックスホテルに行くも両替は宿泊客のみとの事であっさり却下。「財布を盗まれたのよ! 現金がないの!」と泣くも、「事情はわかるけど、私たちにあなたの日本円を両替する権限はないから。月曜日に両替所でどうぞ」と冷たいもの。粘ってみたらようやく「そうね、空港なら空いてるんじゃない?」と知恵を出してくれたので、空港に行ったところ、出入国せずに入れるエリアの両替所は午後3時で閉店。本当に手の打ちようがなかった。結果的には同行者の母がクレジットカードを「置いてくるのを忘れて」いてくれたお蔭で(母との旅行の場合、諸手続きからお金の支払まで全て私が担当し、母はあとからカードの明細を見て自分が使った分の現金を返してくれるだけなので、原則的にはカードも携帯も全て自宅に置いてきているらしい。何て人だ)事なきを得たけど、でもねー。カードで支払えると思った海辺のレストランでは「50ユーロ以下のご使用ではカード利用は受け付けません」って言われるし、ほんとピンチだったの。ATMでキャッシングするまで、本当気が気じゃなかった。
…という訳で、今さら基本のキホン。カードもお財布も二つに分けて、一つはセイフティボックスか鍵付のスーツケースに。財布とパスポートはできれば腹巻型ケースに、どうしても嫌なら前に持って来れるファスナー付ショルダーの、できれば内ポケットに。できれば、ブランド物を避けたバッグで。盗難に遭うと、実被害以上に時間のロスが激しいので…。
そして基本のキホンその2としては、「アメリカ式のサービスは他国の非常識」。両替もカードの使用も、ニューヨークでしてくれるようにはしてくれない場合も時にはあるんだなって思い知らされた。当たり前と言えば当たり前なんだけどねー…。っていうか、もしやニースの治安って、日本の団体ツアーも避けて通る事で名高いイタリア・ナポリより悪いんじゃなかろうか。だから両替もカード使用もネガティブなのか。いずれにせよ、リゾートなんだからおのぼりさんはおのぼりさんらしく、ホテルから海でも見てのんびりしてろってコトなのかも知れない。あーホント、折角パーシャルオーシャンビューのホテルに泊まってたんだから大人しくそうしてればよかったよ。ちなみにニースそのものは、やっぱり海はキレイだし街並みもキレイだし、素敵なところです。

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ちなみに最終日のメーデー、パリの地下鉄、chatelet(ルーブル付近)で乗り換えてsite(ノートルダム大聖堂最寄)まで一駅だけ乗った7号線で、恐らく私は再度、スリの脅威にさらされてしまった。フランスでの私は、余程ワキの甘い顔をしているのか…。我ながら、その事実にショック。同じように後から押されて、気付いたら目の前にある黒プラダのファスナーが空いていたのだ。幸い数日前の失敗を活かして財布はカバンの底、パスポートはファスナー付内ポケットの中、その上にはハンカチやら手帳やら超薄型折りたたみ傘やらガイドブックの切り抜きやらが大量かつ乱雑に入っていた上、何よりも私が「彼女」の存在に気付いたので事なきを得たが、懲りずに「彼女」はすぐ側の地元のキャリアウーマンっぽい女性が持つクロエのエディターズバッグの金具に手をかけていた。私が睨んだので「彼女」は慌てて次の駅で他の車両に走り去っていった(その行動もおかしいですよね)けど、あー、一応リベンジはできたわよ。ちなみに「彼女」は、白人で身長130センチくらいの、日本にいれば子供モデルで幾らでも稼げそうな美少女だった事も付け加えておく。そりゃ、後からちょっと手を伸ばせばかなり小さいスペースでも手が入るわな。