恋愛クルマ図鑑/恋はクルマにつれ、クルマは恋につれ(Part 2)

最近文庫で読んだ、芥川賞受賞の女性作家が書いたクルマ小説『スモールトーク』に、こんな一節がある。昔の男が乗ってきたアストンマーチンに対して、主人公の車好きで鬱病持ちの元キャリアウーマンがつぶやく台詞だ。

「まるで車が私に会いに来たように思わせた。そう思えばよかった。私はちょっとだけヴァンキッシュに恋をしていたいと思った。私は惚れっぽい女でヴァンキッシュはもてる男だった。」    【絲山秋子「スモールトーク」】

クルマ=その男、というわけではないという図式がここにはある。私自身も身に覚えががある話だ。クルマはクルマでカッコよくて、「その車を選んだ男のセンスが好き」というのとは似ているようでちょっと違う。
そこであまのじゃくでしかも悪趣味な私は、何となく逆の事をしたくなった。すなわち、今まで何かあったりなかったりした男達を、実際に乗ってる車は一切考慮せず、単純にクルマに例えていくのだ。ちなみに当然、乗り心地=セックスを意味するわけではないです。


昨日コンパにいた、慶應幼稚舎上がりだと言う明るくて強引でシンプルな感じの大柄なテニスボーイはベンツ・Eクラスのワゴン。「真面目におつき合いして結婚するならこういう人が一番なんだろうなあ」とアタマでは理解しつつ今一歩踏み切れなかった、毎朝出勤前に日経を読み毎週日経ビジネス東洋経済をチェックする、至極穏やかなんだけど穏やかすぎてイマイチ本心が読めないエリート金融マンはトヨタ・プリウス。この日記でも何回かネタにさせて頂いた、何でもぶっちぎりを標榜していた自信満々のイケメン(でも妙にローカル)はフェアレディZか。しかも赤かなんかの。限りなく王道に近いのにちょっとだけお洒落でユニセックスでひねくれていた昔の彼が実際に乗ってた派手なグリーンのフォルクスワーゲン・ポロはそう考えるとものすごくキャラに合ってたんだなあ。
じゃあ、今気になってるあの子は何なんだろう。全体にカッコいいというよりは可愛い感じで、でもアクが強いから飽きが来そうで、プライドは高そうで、実際値段も妙に高くて、ルックスよりは手堅いスペック。さしずめ、オールBMW設計になってからのミニ・クーパーかクーパーSか。
…いやあ、無性に悔しい。何が悔しいって、今私が試乗して一番ほれ込んでローンの見積もりまで取ったのが、何を隠そう07年フルモデルチェンジでBMW共通の6速AT(日本の某メーカー製)を積むようになったMINI ONEなのだ。うーん…。