嘘くさい

何だか嘘くさいなあ、と思う。
例えば週末の午後8時半。美しい女友達と二人で待ち合わせてカフェでお茶して、誰か同世代の男がハーフの男友達を連れてやってきたボルボS80に乗り込む。ステレオから流れる音楽は流行の、ジャズやらボサやらのエッセンスを入れつつクラシックで味付けした今時のラウンジミュージック的なハウスだ。行き先はこの街の、ロマンティックの欠片もないような工業港に程近い薄暗い団地の片隅にある、小汚い、でもものすごく流行っている中華料理屋。明らかにコックもウェイトレスも同じ家族だという顔をしていて、でもその国籍に関してはまったくはっきりしないその店で軽く下ごしらえした後は、ここ1年半くらいアツいと言われているモダンなカフェのソファ席まで移動する。


男同士が交わす会話のトピックは、それぞれが西海岸やらヨーロッパやらに出張した時のエピソードと東京のホットスポット、あとはハーフの男が少し前に買ったマンション用のインテリアをBALS TOKYOとコンラン・ショップで調達したという自慢話。いかにも「中がどうなってるのか見てみたいな」とでも言って欲しそうな口ぶりだけど、その思惑通りにその台詞を口にすれば即座にそこに案内されて「それ相応の」代償を支払う事になるのは目に見えている。だから私たちは終電を理由にその密かで明白な誘いを軽くかわして、男たちも無理にそれを追うことはしない。


嘘くさい。目に映り過ぎ去っていくあらゆるモノが、コトが、すべてが嘘くさい。