『世界遺産』の世界的バリューを考える 〜イタリア旅行記1

moeringal2008-01-08

夜日本に着いたので、時差ボケは基本的にはあまりしなくて済む日程だったはずなのですが、何となく調子が出ません。というわけで、旅行の話でもぼちぼちと…。


今回の旅行はおまかせ団体ツアー。というわけで、自由時間が殆どない代わりに、個人で電車を乗り継いでいくには面倒そうな場所にも行く事ができました。
中でも思った以上に良かったのがバジリカータ州マテーラの洞窟住居アルベロベッロからは数十キロの地点にあるんだけど、いやあ、これがアタリでした。正直、「洞窟住居なんてトルコでもモロッコでも散々見たし…」と思っていて期待していなかっただけにビックリした。洞窟住居の上にさらに新しく洞窟住居が作られていて、川を挟んだ対岸にはさらに原始的な洞窟もあって、高台に行けばとにかく見渡す限り洞窟住居…と本当に規模が大きい! さらに元々がスラムだった上、ずいぶん前に衛生上の問題から住民の多くを新市街に追い出してしまったという経緯があって、どうやら大半が廃墟化している。その廃墟ぶりがまた、何とも言えない風情があります。とは言え一応人も住んでいる気配も感じられて、そのバランスがともあれ絶妙。
聞けば、クリスチャン諸氏の間で物議をかもしたメル・ギブソンのキリスト残酷映画『パッション』でキリストが処刑されるゴルゴダの丘のシーンはここでロケをしたとの事。ううーん、私が行った時は生憎の雨模様だったんですが、それだけに、いかにもそんな雰囲気でした。とにかくいいんです。説明するのは難しいのですが、いやあ、久々にときめいて写真をとりまくってしまいました。
ここの面白さは、そんな独特の場所であるにもかかわらず、地元の人たちに商売っ気が見られないところ。正直アルベロベッロなんかはすっかりバブル期の清里と化している勢いがあったけど(日本人経営のお土産屋さんまで存在。ちなみにそこの屋上はなかなかの絶景スポットなので買わなくても行く価値はアリ)、マテーラにはそれがない! 少なくとも冬はちゃんと開いているお土産屋さんなんて本当に片手で数える程度しかなさそうだし、宿泊場所も少なそう(ようやく今、五つ星ステキ洞窟ホテルをダラダラ作り始めたとの事。ちなみに一応、今でも洞窟ホテルは数軒存在していて、それなりに人気のようです)。そのやる気のなさのお蔭で訪れた私たちは独特の「廃墟オーラ」とでも言うべき雰囲気に圧倒されるわけですが、いや、それってこの街と言うか自治体としてOKなんだろうか。他人事ながら心配になります。実際、今や世界の大抵の場所において日本人より圧倒的に張り切っている韓国人・中国人団体を全く見かけなかったし。
世界遺産になって15年近いらしいのにこれって…。すぐに「世界遺産に指定してもらったぞ!!!」と大騒ぎして記念碑の一つも建立してしまう日本や中国その他アジア諸国とはものすごい空気の差を感じました。恐るべし、イタリア。っていうか、もしや『世界遺産』って、例えば『TOEIC』がいかにも英語検定の世界標準のような顔をしていながら実は受験者の9割以上が日本人と韓国人だってのと同じくらい、アジアでしか通用してない規格だったりして…。なんて事を思わず考えてしまいました(まあユネスコがやってるんだから流石にそこまで極端ではないとは思いますけど)。