デッドストック2007 / 当世独身王子事情 (パート3)

名古屋中の女子の間で、この数年要注意人物の名高かった男がいる。彼の名はB、34才独身。
来歴は日本生まれイタリア育ち、帰国子女枠でW大入学、卒業後は大手商社Mに勤務。父親はどこぞの航空会社の偉いさん。身長は175センチ強、体重も75キロくらいありそうな感じで顔も濃い目、愛車はヤクザみたいなデブの黒いベンツと、絵に描いたような三高バブリーマンである。つーか濃すぎ。
そしてこの男は要注意人物で、何しろろくでなしなのである。とにかく女と見ると誰それかまわず口説く、さらに有り余る体力で無理矢理キスくらいはしてしまうキス魔なのだ。東京に女がいる(普段はめっぽう強気に振舞うくせに、いざとなると「あなたがいなきゃ生きていけない」と泣いてすがるオンナの鑑のような人らしい)にもかかわらず、というかだから遠距離で羽を伸ばしているのか、私の近隣でも、貞操の危機に見舞われた女子から敢えて試してみた強者まで、枚挙にいとまなし。聞くところによると東京から名古屋に飛ばされて来た理由も女性関係で、派遣に手出して捨てて揉めたとか。…ってマジかよー。派遣とのラブアフェア程度で飛ばされるなんて、財閥系って厳しいのねえ。
そして奴のすごいところは、あまりにもアホで妙に憎めないところである。まさに憎みきれないろくでなし、流石イッタリアーノ。私も3年前に飲み会で知り合って以来、偶然バッタリ遭遇したことがあるんだけど、コトに至ってないせいか何なのか何となくフツーに再会を喜び合っちゃったもんねえ。っていうか向こうも平気で話しかけて来るしなー、「他に女がいるのに言い寄るなんて笑止千万。おとといおいで!!!」と言い放って逃げたこのあたくしに対して。当日記で昨年12月28日にその最期を惜しんだミスター恋愛とは違って徹底的に不埒でくだらないあたり、そうだこいつは山田詠美テイストにミスター・アフェア(各種色恋沙汰、情事等)としよう。一応英語はできるみたいだから意味くらいは本人もわかるだろうし。
さてそんなミスター・アフェアであるが、実は去る12月についに年貢を納め入籍、春爛漫でお日柄も大安となる来週には帝国ホテルで総額1000万ハデ婚予定だったりする。にもかかわらずそれを黙ってリョーコちゃんに合コンを依頼してきたり、入籍の事実を知ってるリョーコちゃんに突っ込まれて「あーわかっちゃいましたぁ?」とあっさり悪びれもせず苦笑いするあたり、やっぱり憎めないような。でも合コンでは既にまったく相手にされなくて凹んでたけど。
…というわけで久々にジムに行ったらミスター・アフェアとふたたび偶然遭遇してしまいました。そうだよなーそう言えばこいつはここの会員だった。しかも偶然私が普段行く水・日の夜を除いては結構マメに行ってるとも言ってたっけ。一応元気ぃ?と声をかけるも、なんだかしょんぼりしているB(仮名)。どうしたミスター・アフェア。来週結婚式でしょ?忙しくないの?それともマリッジブルー?
「んー、頑張ってますよぉ。え、もう上がっちゃうの? お風呂でも入って待っててよ、メシでもどう?」ええ、上がっちゃいます。風呂は家で入ります。またね、ミスター・アフェア…うーーーん、もうそんな呼称が似合わないくらいオーラがなくなったなあ。単なるごついおっさんになってしまった。何の色気もないったら。
独身王子の最期は常にさびしい。

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最新情報によればこのB氏、身を固めたのが評価されたのか何なのか、ついに念願の海外赴任となり名古屋を去られたそうです。赴任先はワルシャワ。さて、同じヨーロッパとは言え陽気なイタリアとは随分空気が異なる旧東欧に耐えられるのか、天性のイタリア男よ。