それは夢の終わりよ

時差ボケでだらだらしていたら、今日から連休に入った父が興奮冷めやらぬ表情で帰ってきた。スポーツ新聞とパチンコをこよなく愛する下品極まりない父であるが、この表情は(普段は必ず落ち込んだ表情で帰ってくる)どうやら久々の大当たりに恵まれたらしい。試しに手を出してみたらポンと5,000円札をくれた。こんなことはかれこれ高校時代以来である。大当たりはいよいよ本当のようだ。笑いが止まらない様子の父が一言つぶやいた。
「…エヴァンゲリオン」 なにー! かれこれ10年以上前に一世を風靡したあのオタクアニメが今になってこんな所にまで浸透するとは。私はエヴァファンじゃなかったけど(病みすぎてるから。同じ庵野作品の「ふしぎの海のナディア」程度のマニアックさは好きだったけど)、元ヲタ&当時現代社会学や大衆文化論を学んでいた学生として、当然たしなむ程度には見たし楽しんだし記憶している。オタク・ミーツ・還暦を迎えた俗物!!! 勝手に盛り上がった私は思わず突っ込んでいた。どうやら父の興奮が伝染ったらしい。
「ねえねえ、やっぱり『私のこと、好き?(散々流れてた劇場版トレーラー用の綾波レイの台詞)』とかって言うわけ?」…ニヤリと笑う父。
「『それは夢の終わりよ(劇場版ファイナルの綾波の台詞)』とか?」 …ウォッホッホッホ、と不気味な含み笑いをする父。
「あとなあ、『勝利!』とか『殲滅!』とかって言うんだぞ。あと『使徒』ってなんだ?」と嬉しげに父は付け加えた。ここまで来ると、自分の領域に親が踏み込んでくるのを嫌悪する私としては、混乱を避けられません。突っ込んだのは自分とは言え、ああ、どうしよう。小・中学時代、私が家でアニメ観てるのをあんなに馬鹿にしてた父だったのに。この調子では劇場リニューアル版を観にいきたいとか言い出すかもしれない。
ちなみにうちの父は何十連チャンで散々玉が出まくった終了の合図として『夢の終わりよ』と綾波に言われたんだそうだ。私はいまいちパチンコってわかんないんだけど、それってあの観念論的だったアニメでの使われ方とはあまりにも真逆に即物的で、なんか素敵だと思う。