ミスター恋愛の最期

ミスター恋愛、と私が勝手に呼んでいる人がいる。
まず、ミスター恋愛のプロフィールから説明しよう。ミスター恋愛は愛知県知多地区出身の33才独身。身長165センチ(自称)、体重59キロ(これまた自称)、「外人の子供」と評される、やや濃い目(自称・杉田かおる似)で昔の北国の子供よろしく頬っぺたを紅くした丸顔はちょっと大きめで5頭身半。『東海3県で3本の指に入るバカ学校』(周囲談。私は高校受験してないからよく知らない)な工業高校を卒業後、うちの会社に現場作業員として入社し現在15年目。
…来歴としては、まあ世間様で言ういわゆる『三高』とは対極の位置にあるミスター恋愛であるが、しかし彼はすごいのだ。 毎年平均3人の女性と交際しているという。お相手は、聞く限りだけでもうちの派遣社員に看護婦さんに保母さんにキャバ嬢に大学院生etc…と幅広い。その内容も、9割5分は「自分から惚れこみ、自分からアタックし、自分から振る」という完全な『勝ち逃げパターン』なのである。
そしてミスターのミスターたる所以は、それが『遊んでナンボ』な総合商社のちょいワルリーマンなどとは異なり、常に本気なところ。『ヤリ逃げ』『ヤリ捨て』とは無縁、常に本人的には純愛。しかし、それらの純愛は常に彼の複雑な価値観においてリジェクトされ、あっさりと終焉を迎えるのだという。婚約破棄も今までに2回(自己申告分)。
「すげえ好きー、と思っとったんだけど、つきあっとれんなあという所が出てくるとそれが許せんくなってさあ」 とは本人の弁。 別れは常にあまりにも唐突で、つきあった女性は一人残らず半狂乱になるとの事。事情通の古株OL・Oさんから聞いたところによると、数年前うちの部署に在籍していた派遣社員とミスター恋愛がつきあって別れた際も、お相手は半ストーカー状態になったそうだ。いやはや。
しかし入社以来それを繰り返していたかと思うと、恐るべき経験値である(ま、スパンは短いんだけど)。さらにすごいのは、呑気そうな名古屋弁と雰囲気で男女共に反感を買っていないところだ。これはマジでスゲエのではないだろうか。
ともあれ、ミスター恋愛はモテる。何しろ狙った獲物は落とさないのである。夜勤交代勤務で生活が不規則な自動車工場の現場作業員という女性との出会いが少ない環境の中、恋愛をゲットする能力にはズバ抜けたものがあるに違いない。…それでは何故ミスター恋愛はワンチャンスをモノにできるのか、という点についてインタビューを試みたところ、いくつかの要因が浮かび上がってきた。
①積極果敢なアタック、②連絡がマメ、③送り迎えを苦にしない(ちなみに車はフォルクスワーゲンSUV)、④高価ではないがツボを外さないプレゼント、⑤恋愛部分を除いて仕事が出来そうな堅実な思考回路、以上5つ。…あのー、これって昔ながらのレディーファースト&強いオトコを実践しているだけに見えるんですが。
さてそんなミスター恋愛だが、年末押し迫ってきた昨日、藤原紀香神田うのに続いての正式な婚約発表と相成った。お相手は社内の素朴な雰囲気ながらスタイル抜群の20才。現場作業の一日講師をする中でナンパしたのだという。っていうかひとまわり以上若いって!!! 彼女の目で見れば、同年代+α程度でもっとカッコいい子、周囲にいくらでもいるのに。まさにワンチャンス、と言えよう。今の時代、男子たるもの教養よりマメさと強引さ、なのかも知れない。