マジック・カーペット・ライド!!! 〜「アラジン」

ニューヨーク・ブロードウェイ、ニューアムステルダム劇場のボックスオフィスにて、ちょっとディラン・マッケイみたいな顔をした窓口のお兄ちゃんは言いました。

「8列目のやや右手が空いてきたよ! これは誓って言うけどビューティフル・シートだ。本来はプレミア扱いで260ドルで出してる席だけど、通常価格の155.5ドルになってる。もしも時間が作れるなら、どうだい?」

8列目、端ではない席、コンシェルジェや日系旅行会社のデスクでは3階席の端などを除いて300ドル前後の値段を見積もられた人気公演…
明日の予定を「夜は『レミゼ』で、昼はお義父さんお義母さんは観光バスに乗ってもらってるからヒマなんだよな…ダブル観劇は本来のポリシーから外れるんだけどな…」と瞬時に計算した上で、イッツディール! と、中学時代の英語の教科書で見たきりの言い回しを思わず使ってしまったわたしです。何だか最近しょっちゅうそんな感じだよなあ私大丈夫かなこんなにラッキーで(=浪費していて)…と思ったら、飛行機で読んだ家庭画報の占いで「オペラのプラチナチケットが手に入る」と今年後半の運勢が書かれていて驚いた。えーっと私、オペラのプラチナチケットなんて高額なもの買えないんですけど…それとも、『アラジン』が今、それに相当しているのだろうか…。


というわけでブロードウェイミュージカル『アラジン』を観ることができました。感想。

「飛んだ!じゅうたんが飛んだ!しかも、ベタに“ホール・ニュー・ワールド”で!」 …失礼しました。


もういっこ。「これ、宝塚でやらない?」…いやまあ、100パーセント劇団四季で決まりなんだろうけど、レビュー風の唐突で派手なダンスシーンが妙に宝塚臭くてねー。ラインダンサーのスタイルが期待していたほどよくなくて、ああ、タカラジェンヌの特に男役のスタイルいい子って、(ダンスの実力はともかく)本当にスタイルいいんだなあ…と妙に感心してしまった。あと、出番増やされてる感のある語り部「ヒーローの友達3人組」がこれまた非常に宝塚臭くて。宝塚って若手男役の出番を増やすためによくそういう役が原作無視して作られたり出番増やされたりするみたいなんだけど、まさにそんな感じだったんだよなあ。彼らの衣装も妙に豪華でオイシイ感じだったし。で、あとは基本だけどタイトルロールだけあって、ヒーロー>ヒロインなのも向いてるな。だって、いくら衣装や舞台が宝塚向けでも、例えばアナ雪を宝塚でやるのは無理があるもんねぇ。


…そんなふうにいよいよヅカヲタ入ってきた自分の話はさておき、ハデハデで楽しい作品なのは間違いないです。友達出過ぎだろうとか思いつつ、テンポも悪くないし、もちろん曲もいいし、ランプの魔人のジーニー役のおっさん超うまいし、ジャスミンも可愛いし、劇場もデコラティブで素敵だし(昔「美女と野獣」をやってた劇場かしら?あの一歩入った途端圧倒されるデコな感じ、胸の奥にだけチラリと残っている)、何より魔法のじゅうたんが2階席どころか3階席の近くまで飛ぶし。
土曜日のマチネという事で子どももいっぱい観に来ていたけど、これがミュージカル初体験だったら結構ハードル高くなっちゃうよなあ。その後の観劇人生、佳作でも「なんか地味」とか思われちゃいそう。でも、これをきっかけにミュージカル好き・観劇好きにはなりやすい内容だとは思う。だって、何と言っても、魔法のじゅうたんが空を飛ぶんですもの。去年観た『シンデレラ』でも魔女がフライングしてたし、四季の『リトルマーメイド』でもアリエルが飛ぶことによって水の中の自在な動きを表現してるらしいけど、「ヒトを乗せたモノごと飛ぶ」感じってそれ以上にわかりやすく非日常な光景で、楽しいですよね。