男の嫉妬とアジアカップ

サッカーアジアカップ。それは清水商時代から川口能活を応援し続けている母にとっては「ヨシカツの大会」、そして多くの30代女子にとっては「ツネ様の大会」だと思うのだ、未だに【注1】。2007年? 知らないわ、覚えてないわ、そんなの。観てたけど。ああ、あれは見るべきもののない凡庸な大会だった、日本代表ミーハーファン(サポではない)にとっては。


話変わって、大阪出身でサッカー好きの同居人は当然のようにガンバ大阪が好きである(セレッソのホームスタジアムのほうが実家に近いはずなんだけど、Jリーグ発足時はプロ化していなかったから)。そして、関東にしか拠点がない会社に入ってしまったくせに(だからこそ?)関西出身というだけで有名人・一般人問わず肩入れする傾向にある。さらに、中学から大学までエスカレーターで過ごした出身校を、異常としか思えないほど愛している。
にもかかわらず、彼のツネ様への評は辛い。「だからこそや。あいつのおかげでどれ程ガンバの最終ラインが危なっかしかったか…まあ今でもガンバの守備はイマイチやけどな」そうかなあ。。 単に、同じ出身地・同じ大学卒業なだけに、天がツネ様に与えて彼に与えられなかった他のさまざまなものをまざまざと思い知らされて嫌な気持ちになってるだけなんじゃないだろうか男の嫉妬は怖いなあ、ホント。


いわゆる黄金世代と呼ばれるサッカー選手たちと同世代にあたる私達は、当然のように2006年のワールドカップにひどく期待していた。だから、未だにあの頃の話を引き合いに出す。「少なくとも宮本じゃなくて松田が最終ラインにいればオーストラリア戦でああはならへんかったと思うねん」と主張する同居人、「いやいや、あれは交代で出てきたケネディにしてやられたのよ、あの時は」と主張する、グランパスのユニフォームスポンサーの株を持っている故名古屋には最低限賞金圏内を確保してほしいと願い続けつつ前橋育英時代から松田に目をつけていて「今年の夏は信州・松本に温泉ドライブだな!(←松田が移籍した下位リーグのチームがあるから)」と企んでいる私。なんか、いろいろ逆である。


「じゃあ、宮本のどこを評価するねん」と同居人。それに対して、ラインコントロールの良さ云々は一切言及せず、「だってあの頃、みんなツネ様のとりこだったよ!」と私は返した。


あの頃、サッカー好きを主張する子なんて誰ひとりいなくてもサッカーの話が出て、仲がよかったり只の知り合いだったりした女の子の殆どはサッカーなんて全然知らなくてもツネ様が好きで、一部アタシはちょっと捻りの効いた趣味してるのよという子はヒデが好きで、それでほぼカバーできた。今日は代表戦があるから早く帰る、なんて事が余裕で言えた。それくらい、ツネ様は万能だった。所詮、女子はみんな、顔がよくてサッカーが上手いのに学業もしっかりこなす、語学堪能な男が好きなのだ。サッカーの上手さが93点でも97点でもその4点なんて気にならないものなのだ。
今、ウッチー(顔がいい)と長谷部(審判に粋にアピールできる語学力の上さりげなく2枚目)、あと前田(高卒だけど首都圏のおぼっちゃま進学校OB)まで入れてもあの母数を拾いきることはできていないと思う。あと、周囲の男達がしていた『2006論争』で必ずツネ様の対抗として出てきた松田直樹でもダメだったと思うんだよなあ。ほら、あの人顔は可愛いし本当はサッカーも上手かったと思うんだけど(2002年ごろ、横浜には“マツギャル”なる言葉があったらしい)、言動がアレだから、「サッカー見ない女子でも憧れ」ってわけには…。


要するに、「女子の圧倒的憧れキャラ」というのが欠けてると思うんですよね、今の日本サッカー界には。
内田の容姿と長友の学力、プラス長谷部の英語交渉力。サッカーは代表当落線上レベルにいれば十分。っていうか前述の4つが揃っていて、かつ有力スポンサーと契約していればたぶん大人の事情で代表入りという結果はついてくる気がする。
求む、男も嫉妬するスーパーアイドル。



【注1】2004年中国アジアカップのこと。日本は準々決勝のヨルダン戦でPKにもつれこむ中、キャプテン宮本の今思えばせいぜい日本企業海外部門の若手サラリーマンレベルだったと思われる英語による必死な交渉で足場の悪いエンドの変更に成功し、ゴールキーパー川口の神がかったセーブもあって何とか勝利した、という話。