冬季オリンピックと結婚

テレビを見ていて、38才のスピードスケート日本代表・岡崎朋美選手って結婚してたんだー、と思う。そう言えばニュースになってたっけ? 結構前だからすっかり忘れちゃってたよ。結婚がタイムリーに話題になっていたと言えば同世代のモーグル上村愛子選手で、メディア初登場時の彼女と同じくらいの年の女子高生が街頭インタビューで「結婚したし頑張って欲しいー」と言っていたりする。しかしこの人達、結婚しても競技上の姓は変えていないんだなあ。それとも2人とも婿養子とか?

ちなみに私も去年婿養子ではない形で結婚したけど、会社で使用する姓は旧姓のままである。今の会社に転職する直前に入籍したのだが、ワーキングネーム扱いで旧姓を使用させてもらっている。銀行の名義変更がまだだったからそのほうが良かった、という話もあるけど、むしろ進んで旧姓の使用をを希望した。理由は「なんとなく、自分が違う人になっちゃうみたいで怖かったから」だ。住む場所が変わり、会社が変わり、姓も変わる。今までの自分が跡形もなくなってしまうみたいで、ちょっと怖かったから、会社で使う名前だけは旧姓のままにした。


ほぼ同じ境遇どころかシンガポールという異国の地に行ってしまった友人のE子は、しかし躊躇うことなく新姓で勤務していた。「なんだかこうして、外国で全然違う名字で呼ばれてると、今までの自分が全部うそだったみたい」とにこやかに微笑んでいた彼女の気持ちが、私にはたぶんこれからも理解できないと思う。非常に国際色豊かでエレガントなご主人のご家族と初めて会ったとき、「この家族の一員になれるなんて夢みたい!」と感激したという彼女だから、新姓を名乗るのはむしろ誇らしいことで、その「嬉しさ」の方が、「今までの自分」を「全部うそ」にするのよりも、むしろ勝っていたのだろう。正直に、羨ましいな、と思う。別に、大阪に行く度に食いだおれ状態にしてくれる自分の義父母のことが決して嫌いではないのだけど、私はやはり、新姓の自分にまだ自信が持てない。


話を「結婚した女性アスリート」に戻す。結婚して、すんなり競技上の姓も変えて大成功した女性アスリートと言えば、何と言っても柔道のヤワラちゃんだ。『谷でも金』だ。今や彼女を「田村亮子」と旧姓で言い間違える人は日本中探しても殆どいないのではないだろうか。姓なんか変えたって変わらない、むしろ結婚した自分に誇りを持っているから前面に出したい。そう素直に思える人って強いな、と思う。


婿養子ではなく、競技上での規定とかそういった縛りがないと仮定した場合、上村愛子岡崎朋美はたぶん、谷亮子ほど心の強いアスリートではないのではないか、と勝手に思ってしまう。でもだからこそ頑張って、と私は願わずにはいられない。「今までの自分」を全部受け止めて、その上で頑張って、と。そしてそれは、たぶん私自身への願いでもあるのかもしれない。