ノスタルジア

名古屋に金山という街がある。割と色んな路線が集まっていて、比較的新しいランク高めの全日空ホテル(名古屋駅の高層ビルも栄のテレビ塔も視界に入る、今一番名古屋が一望できるホテルだと思う)と採算合わなくて閉鎖の噂が常にあるバブリーな美術館があって、3000人弱収容できる古いホールがあって、でも全体の雰囲気はきわめて猥雑な感じの。最近の動きとしては、再開発で新しくバスターミナルと簡単なショッピングモール(ちょいとオサレな飲食店と雑貨屋とスーパーと、あとごく普通の本屋やJTBやマッサージ屋が入っている感じ)の複合施設ができて、3〜4年前にはそこそこいい飲み屋やダイニングバーもちょろちょろできて、みたいな。電車通勤をしている関係上、この5年間で最もよく使っている駅だ。
この街の一番好きなところは、夜になると弾き語りの小僧やらダンサーやらがどこからともなく現れるところ。弾き語る奴がいてそれを取り囲んで聴く女子がいて、あいだみつをだか326だかの真似みたいな露天の文字・イラスト描きがいて、その傍で大音響のヒップホップを踊る集団がいる。それは、私が4年間住んでいた東京郊外のある街に似ている。
夜11時。金山を歩いていると、ふと自分がまだ大学生で、まだあの街に住んでいて、同じく大学生の恋人とあてもなくふらふらしているような錯覚に陥る。ふらふらしてぼんやりして部屋に帰る、昨日も今日も明日も、ちょっとの講義とバイトさえ除けば果てしなく自由な日々。でも現実には私はもうすっかり大人で、未来のない(もしくは決して楽しいとは言えない未来がある可能性のある)何かを楽しむ猶予が殆ど残っていないことを思い出す。我に返る。何だかものすごく切なくなって、今という時間が過ぎていくのが惜しくて、しがみつきたくなる。でも何にしがみついたらいいかわからなくて、途方にくれる。やがて電車が来る。
今日の日記とりとめもない上やたらセンチくさくてごめんなさい。