推しが人質に取られた件 ~ニート日記2022-15

午後から出かける。今夜は推しが「突然だけど出ます」とか抜かすので急遽現場なのだ。某演出家が持ってる結婚式二次会用レストランみたいな経年劣化気味のバブリーな店で食事とワンドリンク付きで食事1時間、客席降りというかむしろ軽く参加型に近い雰囲気で二人芝居1時間40分で15000円。ひどい儲け話だ、これを俗にいう「推しが人質に取られる」ってやつだな、と思いながら行った。暇だし。結構楽しかった…ってそれ人質じゃないじゃん結局。

 

私はその演出家のことが好きではないし、私の周囲にいる「無理!」という子ほど嫌いでもない。2.5次元協会や大手がついてるオファーものじゃなくて自分の主宰する劇団の作品は特に評判がよろしくないけど、個人的な感触としては「あ、懐かしいな」だ。特に今日の、「東西冷戦時代を舞台にした多重人格もの」なんて、そのインテリな自分に酔ってる感じとかやたらポエムで抽象化する感じね! 何せ私は普通の私大のちょっと毛色の変わったクリエイティブ系専攻を卒業しているのだ、私は凡人の一般人だけど一緒にドキュメンタリーを制作する実習とかしていた70人足らずのクラスメイトにはめちゃくちゃ出世して世に知られているような子も複数いる。しかも所属サークルも半ば人数合わせ的に入った放送研究会という名の映像制作サークルで、今でいう「ガクチカ」はその映像サークルにおける他大学との渉外部門立ち上げで、立ち上げるだけじゃなくて新歓と学園祭シーズンのピークには2週間で20大学くらい回って若描きも甚だしい映像作品を単純計算で100本以上も見ていちいち感想を書いてあげていたのだ。さらにクラスメイトでも映像サークルの仲間でも演劇もやってる子が何人かいたのでその公演も観に行ってあげていたし、要するに「役者が上手くて綺麗な大人なだけで、中身は学生の若描きの延長なんだよ!」と思いつつ、実は私はそういうのが懐かしくなってしまって憎み切れないし、そもそも嫌いではない。そして、某演出家のプロフィールを見たら私とほぼ同世代、そして日芸の演劇学科卒(私の出身学科に一般受験で入った人の併願校はたぶん日芸が一番多かった)。そんな事だろうと思ったよ!

 

ちなみに推しについては、その演出家の関係者と絡むのが非常に楽しい模様だ。推しが楽しそうならいっか、と思ってしまうヲタの悲しさよ…!まあ、中卒で東証プライムの企業がやってる劇団に所属して「小劇場=キャパ600人」という環境しか知らなかったくせに、最終的に少人数のストレートプレイが好きになったのだから、そういう「大学の演劇サークルノリ」が新鮮で、しかも楽しいのはわかるよ…。でもお金も大事だしプライドも大事だと思うんだけどね…。

 

しかし、その話を先日ミュージカル好きの友達にしたところ、「食事も出てたっぷり側で観られるならいいじゃん。私なんて『ブイ・ドイ』一曲のために15000円ずつ払うんだよ!」と本気で言われてしまった。そして、いや、すべての舞台役者の頂点・帝国劇場のプリンシパル、歴史ある名作そしてオーディションからプレビュー公演までダメな時は情け容赦なく降ろされることで有名な名門「ミス・サイゴン」ですやん、とフォローし切れない私がいたのである。せめてクリスやエレンならともかくジョンは本当にあの一曲だしな…。さらに言うと、個人的に「サイゴン」が好きな演目ではないし…「エリザベート」であれば推しの役が"親戚の人メインのアンサンブル"だったところで100公演なら100公演幸せに通えるけど。「“帝劇に出てる推し"が好きな自分が好き」じゃない限り(ただし2.5次元から上がってきた若手俳優のヲタは結構そういうのある)、帝劇プリンシパルですら「推しが人質に取られる」感じはあったりするのか…。いろいろ考えてしまう。

某演出家については、仕事運も金運も持ってる人なんだろうな、と思う。仕事として2.5次元舞台の仕事しながら自分の劇団の舞台で作りたいものを作る。銀座の一等地にかなり広いレストランも持っててそんな感じで阿漕に運営している(昔はあのデフレ全盛期でもランチに手を出さない強気な二次会系レストランだったはず。まさか事故物件になってしまったのか)。学生時代から片足クリエイティブに突っ込んだ人としては、最高に「(大手企業で揉まれることもなく)大きなストレスなく、好きを仕事にできている」部類なのではないだろうか。

そう言えば映像サークルで私が渉外部長だった時の代表は演劇続けていたよな、どうしているんだろう、何かやっていたら今こそ観に行けるじゃん暇なんだから、と思いついて調べたら、本来中野のポケットスクエアの一角でちょうど公演しているはずだったのに関係者がコロナになって全公演中止になっていた。辛すぎる。